3つの営業変革テーマとイネーブルメント

代表取締役 / 共同創業者 岡安 建司

近年の激しい事業環境の変化にともない、企業が営業に求める成果や役割も大きく変わってきています。その変化に対応すべく多くの企業が「営業変革」に取り組んでいますが、営業変革を推進する上で重要な役割を果たすのがセールスイネーブルメントです。

営業変革を成功させるためには、すぐれた戦略や戦術設計が必要であることは言わずもがなですが、その戦略や戦術を実行に移す「現場の営業パーソンの行動変容」を促すのに効果的な取り組みとして、セールスイネーブルメントを導入する企業が増えています。

本記事では、弊社がイネーブルメントのご支援をおこなう中でよく見る営業変革テーマを「営業戦略」「組織体制」「営業プロセス」の3つの切り口で取り上げながら、それらの変革と絡めてイネーブルメントが実際にどのように取り入れられているのかをご紹介します。

1.変革テーマ①:新しい営業戦略へのシフトと“あるべき営業活動”の定義

事業環境の変化によりこれまで柱となってきた既存ビジネスの競争力が失われつつある中で、新しい営業戦略への転換を目指す変革です。具体的には、既存ビジネスとのシナジー効果が高い新しい市場の開拓やより市場ニーズに即した新サービス・製品の展開により、既存事業の強化を図ります。

しかし、新たな営業戦略を掲げたものの、現場の動きがうまくシフトせず、変革が進まないケースが多くの企業で散見されます。顧客や商材が変われば求められる営業アプローチも当然違ってくるはずですが、営業現場にとって旧来の売り方を変えることは簡単なことではなく、思うような成果が上がってこないといった状況です。

このような状況に陥らないよう、新たな戦略の実行とあわせて「営業のあるべき行動」や行動に必要な「スキル・知識」をスキルマップ*で体系的に整理し、そのスキルマップを基に日々の営業活動を管理、改善しながら営業変革を推進しようとするセールスイネーブルメントの動きがここ最近見られるようになりました。

*スキルマップ:成果創出に必要な行動、スキル、知識を連動させ、営業のあるべき姿の全体像を体系的に整理したもの

営業戦略の変更にともなう重点領域のシフト

このように、営業戦略を見直すタイミングでセールスイネーブルメントに取り組むケースが増えてきていますが、着手する際にまず意識していただきたいのが、「ターゲット顧客の明確化」と「重点管理指標の設定」です。ターゲットは、これまでまったく接点がない新規顧客なのか、多少接点はあるが自社とは取引が少ない顧客なのか、取引実績がある既存顧客だがこれまで接点がない他部門なのかなど、顧客によって有効な営業アプローチを選択する必要があります。また、新たに設定したターゲットへアプローチするとして、その成果をどのように測定するのか、重視する指標をあらかじめ明確に定めた上であるべき営業活動の設計と落とし込みをおこなうことも重要なポイントです。

ある企業では、時代の変遷とともに変化する「既存顧客の新たな課題の発掘」とそれに応えうる「新しい商材の提案」に挑戦する中で、営業スタイル変革とセールスイネーブルメントに取り組み、「新規商談数」と「新規商談金額」という重要指標の達成を実現しています。

2.変革テーマ②:営業の分業化とチームセリング実現のためのレベニューイネーブルメント

ここ数年でインサイドセールス部門やカスタマーサクセス部門の立ち上げ、強化など営業の分業化、組織変革が進んでいます。インサイドセールスであれば「顧客育成」「商談創出」、フィールドセールスであれば「案件受注」、カスタマーサクセスであれば「アップセル・クロスセル」や「サービスの継続利用」など、部門ごとに求められる役割を明確化し、各部門が専門性を発揮することで営業活動の効率化や生産性の向上を目指すThe Model型の営業組織への移行です。

当初はSaaS企業を中心に導入が加速したThe Modelですが、近年はMAやSFA、CRMなどのシステム整備が進み組織間の連携が比較的シームレスにおこなえるようになったことで、商談や社内オペレーションが複雑化しやすい商材を扱う企業でも分業化を取り入れやすくなったといえます。

分業化への移行が進む一方で、期待したほどの効果が得られていないといった声も聞こえてきます。その背景にはさまざまな事情がありますが、分業制を敷き、各部門の役割や達成すべき目標を明確にしたものの、「目標達成に向けた行動」が具体化されていないがために、結局は現場任せの運用になり思うような成果につながらない、といったケースも少なくありません。

こうした問題を解決するための手段としてもイネーブルメントは有効です。イネーブルメントでは、組織体制の整備をおこなうと同時に、各部門に求められる役割、追うべき指標を明確化するだけでなく、ここでも成果達成に必要な「行動」「スキル・知識」をスキルマップで整理し、行動変容を促していきます。

ここでのポイントは、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスがそれぞれに専門性を発揮し成果につなげていくためのスキルマップは同じではないということです。それぞれに適応したスキルマップを作成し、それを基に育成施策に落とし込むことで部門ごとに最適化された人の成長の仕組みを構築していくのです。

イネーブルメントというと、フィールドセールスに特化した仕組みというイメージをおもちの方もいるかもしれませんが、今は顧客接点をもつ部門を中心にそのカバー範囲を拡大しており、「レベニューイネーブルメント」がトレンドとなりつつあります。

ある企業では、営業変革の一環で分業化、MA、SFAの導入、イネーブルメントの推進を同時に進め、前年比約1.5倍の売上目標を達成しました。施策ありき、ツールありきではなく、「成果」を起点とした組織体制の構築、育成施策の展開を実現できたことは成功の大きな要因といえるでしょう。

3.変革テーマ③:パイプラインを強化する“顧客視点”の営業プロセス設計

商談が受注に至るまでの営業の一連の流れをパイプに見立て、営業プロセスがどの程度前進しているのか、どこがボトルネックとなっているのかなどを管理、分析することで営業活動の改善につなげたり、売上予測を立てていく手法をパイプライン管理といいます。SFAの登場以来、パイプライン管理が格段におこないやすくなり、多くの営業組織で活動管理や売上予測の精度が向上してきています。

ここで重要な問いは、「そもそもなぜパイプライン管理をしているのか?」「活動管理や売上予測の先にあるのは何か?」ということです。

営業の最重要ミッションは「売上目標の達成」です。一つひとつの商談を効率的かつ着実に前進させるためにパイプライン管理をおこない、可視化されたデータを基に定期的に活動を見直しながら受注確度を高めていくのです。

しかしながら、せっかくSFAを導入してもパイプラインが強化されず、投資対効果を見出せないと悩む企業もまだまだ多いのが実情です。

セールスイネーブルメントでは、まず、「正しく商談を前進させる」ために、営業プロセスを“顧客視点”で設計します。本来営業活動は、顧客が導入・購入に至るまでの意思決定プロセスに沿っておこなうべきものであり、営業プロセスを設計する上でも、「顧客の課題特定」「ソリューションの合意」「契約条件の合意」などのように、顧客視点の要素を盛り込まなくてはなりません。よくある「問い合せ」「初回訪問」「提案」などといった自社視点で設計された営業プロセスを軸に活動してしまうと、営業が実施したか、していないかで案件の進捗度合いが決まってしまい、実際に顧客の意思決定プロセスが前進したのかどうかがわからず、分析や行動の改善が難しくなってしまいます。

また、前述の通り、案件の進捗度合いを可視化するだけでなく、分析結果を基に行動を改善していくことがパイプライン強化には欠かせません。営業プロセス設計では、プロセスをどの段階で区切り、各プロセスでどのような情報を管理すべきなのかも整理します。プロセスごとに追うべき指標や取得すべき情報を明確にしておくことは、営業パーソンが商談をおこなう上での重要な指針となります。また、蓄積されたデータを活用することで、次に必要なアクションの設定など目標達成に向けたマネジメントも格段におこないやすくなるでしょう。

SFAを導入している企業とセールスイネーブルメントを推進する際には、営業プロセスの再設計から始めるケースがとても多いです。

「ITツールの導入にとどまってしまい、期待通りの成果が見込めない」 そのような状況に陥っている場合には、ぜひ営業プロセスの定義から見直してみることをおすすめします。

ここまで3つの営業変革テーマとイネーブルメントの取り組みについてご紹介してきましたが、これらを実行する上で鍵となるのは、現場の営業パーソンの“行動変容”です。変革を推進したくとも、人の動きが変わらなければ絵に描いた餅となり、企業が描く未来の実現が遠のいてしまいます。

セールスイネーブルメントでは、企業が掲げる営業変革テーマに即した戦略設計・プログラム構築から、プログラムの実行、実施状況管理、効果検証までの一連のサイクルを回すことで、“人の成長”を通じた持続的な営業成果創出の仕組みを実現します。

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