セールスイネーブルメントチームの人選

代表取締役 / 共同創業者 岡安 建司

セールスイネーブルメントチームの人選

日本でも徐々に注目を集めつつあるセールスイネーブルメント(Sales Enablement)。 今回はそのセールスイネーブルメントを推進する「イネーブラー(Enabler)」になるために必要なスキル、そしてイネーブラーのキャリアパスに焦点をあててみましょう。

1.欧米におけるイネーブルポジションの増加

CSO Insight 2019 Sales Enablement Report: Fifth Annual Sales Enablement Study」の調査で、Sales Enablementの専門組織を社内に持つ企業は2013年に19.3%であったのが、2019年には61.3%まで拡大し、年々増加傾向にあることが明らかになりました。 転職、採用、またビジネス上でのネットワーキングの作りのために使われているLinked inを覗いてみると、”Enablement”というタイトルが入っている人材の数がここ3年ほどで、3千人から1万人と3倍以上に増えているという調査結果もあります。

セールスイネーブルメント職種の増加

もちろんこの中には純粋なイネーブラーのみならず、例えばイネーブルメントツールを取り扱うSaaSベンダーに勤めている方なども含まれている可能性がありますが、CAGR(年平均成長率)が32%弱という数字からも、欧米においてセールスイネーブルメントが重要視されていることがわかりますし、実際、欧米では「セールスイネーブラー」というポジションでの採用・募集事項もよく目にします。

2.イネーブラーのスキル要件

では、イネーブラーのスキル要件にはどのようなものがあるのでしょうか。
本稿では大きく「ハードスキル」「ソフトスキル」の2つの観点から一般的に「イネーブラー」に必要とされるスキル要件について触れていきたいと思います。

まず一つ目のハードスキルです。代表的なものをいくつか挙げてみましょう。

  • プログラムプランニング・マネジメントスキル(経営ニーズに合致したイネーブルメントを実施する上で必須)
  • 多角的な分析・体系化スキル(成果を創出するために必要な行動・スキルを整理する上で必須)
  • ヒアリングスキル(プログラムの体系化や内製化する上で必須)
  • スピーディーな資料作成能力(プログラムを内製化する上で必須)
  • データ分析能力(営業指標を分析し育成テーマを抽出する上で必須)

これらの要件を全て持ち合わせた人材はなかなか見つけにくい(特に日本においては)というのが現実かと思います。故に、皆さんのイネーブルメントを推進するにあたっては、イネーブルメントの取り組みテーマに合わせて要件の優先順位を決めながら必要な人材を採用する、あるいは自社でイネーブラーの育成をする必要があります。

例えば、セールスイネーブルメント導入時の「立ち上げ」がテーマであれば、「プロジェクトマネージャースキル」や「自社の経営ニーズを踏まえた上での多角的な分析思考スキル」などといった要件の優先順位が高くなると思われます。

また、「トレーニングの内製化」がテーマであれば、「体系化スキル」や「現場からのヒアリングスキル」などといった要件の優先順位が上がってくるはずです。

このように、イネーブルメントのステージに合わせて採用・育成テーマを変えていくことが現実的な動きとなります。

続いて、二つ目のソフトスキルに関して触れていきましょう。

セールスイネーブルメントチームは顧客ジャーニーに立った上で、自社にとって最適な営業戦術を考え営業組織を支援するミッションを担っています。営業現場が求めているものは何か、必要なものは何かを常に考え、社内のコンセンサスを取りながら進めていくバランス感覚とスキルが必要になってきます。

スキルとしては例えば次のようなものが挙げられます。

  • 現場から理解を得るためのコミュニケーションスキル(イネーブルメントの取組みに対して賛同を獲得するために必須)
  • 現場マインドの理解(頭でっかちにならず現場目線でものごとを考える上で必須)
  • 様々なステークホルダーとの折衝力(社内縦・横の横断業務のみならず社外ベンダーと関係作りをする上で必須)

こうしたハードスキル・ソフトスキルに加え、SFA/CRMなどといった「ツールの理解」を深めること、Sales Techの動向や人材育成手法のトレンドといった「ナレッジ(知識)」を身につけておくことの重要性もお伝えしたいと思います。

3.イネーブラーのキャリアパス

上述した通り、セールスイネーブルメントチームの業務は「営業」「組織・人材開発」「プロジェクトマネジメント」「IT」「コンテンツ開発」など多岐にわたり、様々な営業チームや他部署と接点があるという特徴が挙げられますが、最後にこうした「イネーブラー」というキャリアを積む前(IN)・積んだ後(OUT)のキャリアパスについて触れてみたいと思います。

まず、「イネーブラーになる前のキャリア(IN)」としては、次のような経験が活きると考えられます。

  • 営業経験
  • 営業マネジメント経験
  • 人材開発経験
  • SFAなどのIT活用経験

これらの経験を持った人材に加え、「人の育成」や「生産性向上」といったテーマに関心が強い人材もイネーブラーというポジションに親和性があるといえるでしょう。これらの経験をお持ちの方は是非イネーブルメントの業務にキャリアを広げてみてはいかがでしょうか。

また、「イネーブラー後のキャリア(OUT)」としては次のようなポジションが考えられます。

  • 営業マネジメントポジション
  • 経営企画や戦略部門のポジション
  • 人事部門のポジション

部門横断の視点、人材育成の視点、様々なステークホルダーとの関係構築の視点から物事を考えるポジションで得たスキルや経験は、まさに「マネジメントに必要とされるスキル・経験そのもの」であり、イネーブラーを卒業した人材は「マネジメント」というフィールドで活躍できる人材となりえます。 セールスイネーブルメントは、営業支援・営業人材育成のみならず、将来のマネジメント人材の育成・確保といった点でも有効な営みであるといえるのです。

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