自社に最適なスキルマップとは?成果を出す営業に必要な行動・スキル・知識を可視化

自社に最適なスキルマップとは?成果を出す営業に必要な行動・スキル・知識を可視化

近年の激しい競争社会を生き抜くために、多くの営業組織が戦略や体制の見直しを図る中、組織を支える“人材の変革”の重要性がますます高まっています。一方で、これまでの育成手法では、結果として人が成長したのか、実際に組織の戦略に即した成果を出せるようになったのか、といった「育成の投資対効果」が見えにくく、自組織に最適な成長支援の仕方を見出せずに悩む営業リーダーやマネージャーは多いです。

人の成長を通じた持続的な営業成果創出の仕組み」であるセールスイネーブルメントは、このような課題の最適解として、昨今さまざまな企業で導入が進んでいますが、本記事では、そのコアとなる「スキルマップ*」について、弊社がこれまで培ってきたイネーブルメント支援の知見を基に、具体的作成方法や活用事例なども交えながら解説します。

*スキルマップ:成果を生み出す営業に求められる行動やスキル・知識を体系的に整理したもの

1.自社のあるべき営業人材モデル「スキルマップ」とは

スキルマップとは、「営業組織が成果を創出するために必要となる行動やスキル、知識を体系的に整理したあるべき営業人材モデル」です。

人事部などが作成するスキルマップは、その企業で役務を遂行するうえで求められる基礎スキル全般、例えば、業務系、対人系、思考系など幅広いカテゴリー、かつ情報収集力、プレゼンテーション力、仮説思考力など汎用的なスキルが羅列されているものが代表的ですが、ここでは営業に特化したスキルマップについてご紹介したいと思います。

営業スキルマップは、「営業成果を創出する」ために必要な要素が体系的に整理されていることに最大の特徴があります。顧客の意思決定を前進させるための営業プロセスを定め、そのプロセスを前進させるために鍵となる行動を抽出し、その行動を起こすために求められるスキルを洗い出し、そのスキルを習得するうえで必要な知識を整理します。

『Enablement Skill Map』は、株式会社R-Square & Companyの登録商標です。

スキルマップを整備することで、営業プロセスのうち営業個々人がつまづきやすい箇所や、そのプロセスを前進させるために具体的に何をすべきなのかが明確になり、営業メンバーの自発的な成長促進や、営業マネージャーの効率的、効果的な指導、育成に役立てることができます。さらには、営業組織の育成方針策定や営業力強化の仕組み作りなどへと展開することで、人と組織の成長に貢献できるツールといえるでしょう。

2.スキルマップ作成の目的

前述のとおり、営業スキルマップは「成果を生み出す営業に求められる行動やスキル・知識を体系的に整理したもの」で、作成の目的は「営業が組織に求められる成果を出せるようにすること」ですが、組織方針や強化したい対象によってその定義はさまざまです。

組織方針に即して作成

例)

  • 新規顧客を獲得したい
  • 既存顧客に新製品を導入したい
  • 既存顧客に製品の継続利用を促したい

強化したい対象に合わせて作成

例)

  • 早期即戦力化が期待される新卒や中途入社メンバー
  • 目標達成に苦戦する中堅メンバー
  • 新たに立ち上げたばかりのインサイドセールス

このように、企業の営業戦略に即した成果創出を実現するために、目的を踏まえて営業スキルマップを作成することが重要です。

3.スキルマップ作成に必要な5ステップと構成要素

では、スキルマップはどのように作成するのでしょうか。5つのステップと盛り込むべき要素について見ていきましょう。

スキルマップ作成に必要な5ステップ

① 目的を明確にする
② ハイパフォーマーを選定する
③ インタビューを実施する
④ Key Actionを整理する
⑤ 必要なスキルと知識を定義する

① 目的を明確にする

まずは、前述の例のように、「誰がどのような成果を創出する必要があるのか」目的を明確にすることから始めましょう。

ここが明確になっていないと、営業スキルマップを導入しても、期待する成果につながりにくい状況が発生してしまいます。特に、営業戦略の見直し時や新組織の立ち上げ時などは、メンバーに既存の活動から脱却し、新たな活動を実施してもらうことになるため、特に注意が必要です。

どの組織の誰にどのような成果を期待するのか、経営層や展開する組織のリーダー間でしっかりと認識を合わせた上で、営業スキルマップの作成に臨みましょう。

② ハイパフォーマーを選定する

目的を明確にしたら、つぎは、新規の顧客をうまく獲得できている人、新製品の販売実績が多い人など、目的に即した成果を創出している人を選定します。

この際、ハイパフォーマーといわれる人が社内にいればベストですが、新たな営業スタイルへの変革が求められるタイミングで過去実績が活かしきれない場合や、そもそも既存の営業メンバーの中にハイパフォーマーがいないといったケースも少なくありません。その場合には、部分的でもいいので、目的達成のために組織が期待する動き方をしている人を選定することを推奨します。例えば、新規顧客とのアポ取りを得意としている人、初回打ち合わせでの顧客との信頼関係構築力が高い人、提案から受注までの綿密な顧客フォローに定評がある人、既存顧客と中長期の戦略を描くことに長けている人、などです。営業プロセスのすべてにおいて完璧な人はなかなかいないと思いますので、一部でも手本になる動きをしている人を選定しつなぎ合わせることで、「あるべき営業人材モデル」に近づけていくようにしましょう。

また、可視化されたあるべき営業人材モデルは、メンバーへの展開を前提としているため、「現在は営業現場から離れているが、最近まで多くの実績を残しており、他メンバーに一目置かれている」など、「あの人の活動事例なら納得できる」と組織内で信頼されている人を選定することも有効です。

③ インタビューを実施する

ハイパフォーマーを選定したら、いよいよインタビューですが、ここでポイントとなるのが「行動だけでなくその行動の背景を聞き出すこと」です。

行動を言語化してみると、他の営業パーソンとハイパフォーマーの行動が共通しているように見えることが多々ありますが、どのような意図でその行動を行っているのか、深く掘り下げて具体化することにより、同じ行動に見えてもその精度の違いに気づくことができます。

例えば、「訪問前に顧客の最新情報を調べる」という行動ひとつとっても、ミーティングのアイスブレイクのためなのか、提案内容と顧客情報を関連づけるためなのか、顧客課題について仮説の精度を上げるためなのかなど、目的によって範囲も難易度も変わってきます。目的や行動の意図を踏まえたハイパフォーマーの活動実体をインタビューにより明らかにし、スキルマップに表現することが重要です。

なお、ハイパフォーマー自身は「自分はふつうに営業活動をしている」と思っており、特別なことを行なっているという認識がないことが多いです。そのため、インタビューでは「普通かもしれないのですが…」というような発言が頻繁に出てきますが、その中にこそ、他の営業パーソンが見習うべき要素が隠れているということを常に意識しておきましょう。

④ Key Actionを整理する

「顧客の意思決定を前に進めるために鍵となる行動」を、Key Actionといいます。ハイパフォーマーインタビューの内容を踏まえて、顧客の意思を反映した営業プロセスを着実に前進させるために、各プロセスで特に重要と思われる行動をKey Actionとして定めていきます。

その際の注意点は、Key Action名は「一般的な言葉ではなく、自社の営業パーソンにとって実感が湧きそうな言葉」とすることです。Key Actionは、商談が滞ってしまった時などに営業パーソンが活動の指針とするものなので、「このように行動すれば、確かに前に進めるかもしれない」という共感が得られるものでなければ活用されません。インタビューで把握した具体例とともに、現場での活用がイメージできるKey Action名にしましょう。

⑤ 必要なスキルと知識を定義する

最後に、Key Actionを実践するために必要なスキルや知識*を定義します。営業活動をしていると、さまざまな状況に直面すると思いますが、単にKey Actionをインプットしただけでは現場での実践は困難です。あらゆる営業場面において、Key Actionが再現性をもって実践できるようになるためにはどのようなスキルを習得しておくべきか、そのスキルを発揮するためにはどのような知識が必要かまでを定義しておく必要があります。

*ここでいう知識には、スキルを活用するために「あらかじめ把握しておくべき情報」や「習得しておくべき知識・経験」などが含まれます

スキルや知識を定義する際には、Key Actionを「実行するうえで前提となるもの」「実行中に活用すべきもの」などの観点で洗い出すと抜け漏れを防ぎやすくなります。例えば、“相手の関心を惹くサービス紹介”というKey Actionがあったとします。この場合、実行の前提として押さえておくべきなのは“相手目線のテーマ設定”というスキルや、“顧客の興味関心事項”という知識だったり、実行中に必要となるのは、“印象に残るストーリー展開”というスキルや、“他社との違いを印象付けるための自社・競合サービスのポジショニング”などの知識だったりするでしょう。

留意点として、あまり多くのスキルや知識を設定してしまうと、現場で活用しにくくなってしまうことがあるため、1つのKey Actionにつき1~4個程度で構成することを推奨しています。

4.自社に合ったスキルマップ作成のポイント

このように、スキルマップの構成要素は、「営業プロセス」「Key Action」「スキル」「知識」ですが、次のような営業の特色を踏まえて作成することで、より組織の実態に合ったスキルマップへと仕上げていくことができます。

  • 担当顧客数
  • 受注までの商談日数
  • 自社の商材特性

担当顧客数

営業の担当顧客数が100社以上ある場合、すべてに同等の工数を割くことは現実的ではないため、「顧客の優先順位付け」は非常に重要なアクションとなります。一方、数十社程度であれば、どの顧客からどのタイミングで案件を獲得するのかといった「顧客ごとの予算達成プランニング」が欠かせません。また、重点顧客1~2社を担当しているのであれば、「顧客の組織ごとの課題分析」まで踏み込む必要があるでしょう。

このように、営業活動の上流工程である「営業活動方針や計画を策定するプロセス」において、スキルマップに影響するのが「担当顧客数」です。

受注までの商談日数

受注までのサイクルが1ヶ月程度であれば、「営業の活動量」を増やすための対策がより重要であるのに対し、数ヶ月から半年程度であれば、「営業の活動量」と「提案の質」を両立させる必要が出てくるでしょう。ある程度は型化するなどの効率性も追求しつつ、顧客ニーズや課題に寄り添いながらの柔軟な対応も求められるはずです。また、受注まで半年以上、場合によっては数年間といった期間を要する場合には、顧客との信頼関係構築が肝要となるため、「最適なタイミングでの質の高い情報の提供」や「経営レベルのディスカッション」ができるなど、“戦略パートナー”としての立ち振る舞いが期待されることもあります。

このように、営業活動の大部分を占める「初回商談から受注までのプロセス」において、スキルマップに影響するのが「商談日数」です。期初の活動計画策定時だけでなく、期中のリプランニング時にも考慮すべき要素といえます。

自社の商材特性

自社の取り扱い製品・サービスを、営業判断でどの程度までカスタマイズ可能なのかや、自社・他社問わず、他の製品・サービスとの組み合わせが可能なのかなど、商材特性によっても提案内容は大きく異なります。カスタマイズが難しい場合には、顧客の課題解決に自社の製品・サービスがどのように寄与するかのロジックをわかりやすく説明することが重要になりますし、ある程度のカスタマイズや他サービスとの組み合わせが可能である場合には、顧客の要望を最大限叶えられる解を検討しつつも、自社における実現可能性や収益性を考慮した提案を示していく必要があるでしょう。

このように、営業活動のうち、特に「提案のプロセス」において、スキルマップに影響するのが「商材特性」です。

上記のとおり、営業特性も踏まえたうえでスキルマップを作成することで、現場での活用度や導入後の効果が変わってきますので、ぜひ意識してみてください。

5.スキルマップの種類

企業、組織によって整備すべきスキルマップは実にさまざまですが、これまで弊社がご支援してきた中で、「営業アプローチ別」にスキルマップを作成するケースが多いため、ここで代表的なものをご紹介したいと思います。

営業アプローチ別

プロダクトセリング型

既に顕在化している顧客ニーズや課題を捉え、それらに合致する自社の製品やサービスを提案する営業手法を「プロダクトセリング」といいます。多くの顧客を抱え、短い期間で効率的な営業活動が求められる組織の営業力底上げや、新入社員に対し今ある営業の型の高速インストールが求められる組織のオンボーディングを目的に、プロダクトセリング型のスキルマップを作成するケースが多いです。

ソリューションセリング型

まだ潜在的な顧客ニーズや課題に対して、情報収集やディスカッションを通じて顕在化させたうえで、解決策としての自社製品やサービスを提示する営業手法を「ソリューションセリング」といいます。インターネット上でさまざまな情報の取得が可能となったいま、顧客は営業に会う前に自身で気になる製品の情報収集や競合製品との比較検討までを済ませてしまう傾向にあり、単なる製品・サービス説明では顧客に響かないといった場面も散見されるようになりました。激しい競争を勝ち抜くために、顧客自身が明確にできていないニーズや課題を的確に捉え、他社と差別化を図った営業活動を行うことが求められる組織はいっそう増えており、弊社がイネーブルメントのご支援を行う中でも、ソリューションセリング型のスキルマップを作成するケースは圧倒的に多いです。

ビジョンセリング型

顧客もまだ描けていない、将来的に目指すべき姿やビジョン、今後のビジネスの展開などについて、精度の高い仮設を提示し、顧客とともに議論しながら具体化させたうえで、自社で支援できる領域を提示する営業手法を「ビジョンセリング」といいます。顧客と中長期の事業イメージをすり合わせる際や、顧客の上位役職者と視座が高く視野が広い議論を行う際などに役立ちます。受注するまでの期間は長くなることが多いですが、顧客の意思決定プロセスの上流から入り込むことで、優先的に提案機会を頂けたり、幅広い領域の提案・受注につながりやすかったりすることもあるため、中長期的に事業を拡大させていきたい組織に対し、ビジョンセリング型のスキルマップを作成するケースがあります。

これらの3つの営業手法は、顧客の状況や営業の場面などによって柔軟に使い分けることが重要なので、複数のスキルマップを整備しておくことも効果的です。

また、近年生産性向上のために営業の分業化が進んでいますが、それにともない、営業に求められる役割もより細分化してきています。職種別、階層別、顧客業種別、顧客セグメント別にベースのスキルマップを応用していくことも効果的ですので、こちらもご参考までにいくつかご紹介したいと思います。

職種別スキルマップ

インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど顧客接点をもつ組織それぞれに対応したスキルマップです。新規商談獲得、新規案件受注、既存案件継続・拡大など、各役割に期待される成果を定義し、成果に至るプロセスを明確化したうえでスキルマップに反映します。

階層別スキルマップ

新卒向け、中途入社メンバー向け、中堅メンバー向け、営業マネージャー向けなど、営業の階層別に作成するスキルマップです。新卒、中堅入社メンバーはオンボーディング、中堅メンバーは営業力の底上げ、営業マネージャーは部下の成果創出支援や育成など、それぞれの階層に必要とされる要素をスキルマップに反映します。

顧客業種別スキルマップ

金融業界向け、自治体などの公共事業向け、製造業界向け、など営業がアプローチする顧客の業界属性に合わせて作成するスキルマップです。担当顧客の意思決定プロセスが業界によって大きく異なる場合に、それを踏まえてスキルマップを作成します。

顧客セグメント別スキルマップ

中小企業向け、中堅企業向け、大企業向けなど顧客規模に応じてセグメントしている営業組織向けに作成するスキルマップです。担当顧客数や商談日数によって営業に求められる動き方は変わるため、それを踏まえてスキルマップを作成します。

ここでご紹介したスキルマップの他にも、企業、組織に応じてさまざまなスキルマップが存在しますが、これまで述べてきたように、スキルマップを作成する際には、考慮すべき要素が多分にあり、最低限の品質が担保されていなければ十分な効果を発揮することができません。一方で、作成に工数をかけすぎてしまうと、いざ活用するときには既にインタビューした情報が陳腐化してしまっていたり、環境変化に追いつけなくなってしまったりします。

弊社のイネーブルメントコンサルティングの知見やノウハウをベースに開発されたセールスイネーブルメントツール『Enablement App』には、スキルマップの自動生成機能が実装されていますので、ご興味があればぜひお気軽にお問い合わせください。

営業成果と育成をつなぐセールスイネーブルメントツール「Enablement App」が機能強化、自社のあるべき営業人材モデルを反映したスキルマップの自動生成が可能に >>

6.スキルマップ活用のメリットと導入時の留意点

ここまでスキルマップの作成方法についてお伝えしてきましたが、活用することで具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。導入時の留意点とあわせてご紹介します。

スキルマップ活用のメリット

新たな戦略に即した営業活動を促進できる

事業環境に変化が生じて、今までのやり方では成果が出せなくなってしまった中堅メンバーや、これまでと異なる製品や顧客に対し成果創出を求められているメンバー、組織体制の変更などで新たな役割を担うことになったメンバーなどに対して、「営業戦略に即した営業のあるべき人材モデル」を定義し、各営業プロセスでどのような行動を行えばいいのか、必要なスキルや知識は何なのかを明確化し、インプットすることで、組織が求める成果を起点とした行動変容を促せます。

新入社員の即戦力化が図れる

まだ自分自身の営業の型をもっていない新入社員に対し、ハイパフォーマーから抽出した「成果を出すための営業の型」を落とし込むことで、早期立ち上げが期待できます。採用のスピードにメンバーの育成が追い付いていない成長企業などで活用されるケースが多いです。

営業能力や成果のばらつきを解消できる

営業パーソンが停滞している営業プロセスに対して、どの行動を改善すればいいのか、どのスキルやナレッジを習得させればいいのか、スキルマップにより育成課題が明確になります。

例えば、新たな商談を作れているものの提案まで進めないというメンバーがいた場合、商談創出から提案にいたる営業プロセスのKey Actionの中で、苦手としているものを確認します。顧客の課題把握ができていないとしたら、課題把握に必要なスキルトレーニングや知識付与を行うなど、成果を起点とした具体的な育成施策が見えてくるのです。

環境変化に強い営業組織への発展が期待できる

市場環境や顧客の状況、自社のリソースなどに変化が生じた際にも、スキルマップで営業の型が可視化されていると、見直すべきポイントについて分析や改善が行いやすくなるため、「いまあるべき営業人材モデル」への変革を実現しやすくなります。環境変化や市場競争がいっそう激しさを増す近年、営業改革の実現が期待できるツールとしても期待が高まっています。

スキルマップ導入時の留意点

対象やタイミングを見誤らない

スキルマップがもっとも効果を発揮するのは、「成長余地はあるが、期待成果をまだ出せていないメンバー」に対してです。すでに独自の営業手法を確立し成果を出しているハイパフォーマーに対し、営業の型を無理やりあてはめてしまうと、逆効果となってしまうことがあります。このようなメンバーに対しては、環境変化により旧来の手法では成果が出なくなってしまった場合などに効果を発揮しますので、導入のタイミングにも注意しましょう。

目的や戦略を見誤らない

また、新たな製品・サービスの展開やこれまでと異なるターゲットへのアプローチなど営業戦略のシフトへ対応するためにスキルマップを導入する際も注意が必要です。目的は「新たな製品・サービスやターゲットにおける成果創出」であるにも関わらず、スキルマップに落とし込めていないと、営業は「従来の製品・サービスや既存顧客の売上最大化」にばかり注力してしまい、組織の期待する成果につながらないといったケースが実際にあります。経営視点で見ると、戦略や求める成果を臨機応変に変える必要が出てくることもあると思いますが、その際には新たな戦略、目的に即したスキルマップへの見直しもあわせて検討しましょう。

7.スキルマップの活用事例

最後に、スキルマップの具体的な活用事例を見てみましょう。

新規案件創出に特化した売り方へと営業スタイル変革を実現

ある企業では、長きにわたり既存事業が売上の大部分を占め、顧客の継続率も高い状況が続いていましたが、近年の環境変化により、既存事業が縮小傾向へと転じました。速やかに新規顧客開拓や新サービス展開を推進すべく、営業スタイル変革を目的にスキルマップを導入しました。同時にスキルマップをベースとしたイネーブルメントプログラムも展開した結果、「新規案件の創出件数」の増加という営業成果と「顧客の課題仮説構築力」の向上という育成成果を創出することに成功しています。

「新入社員向け」から「既存社員向け」へと段階的に成長を支援

複雑多岐にわたる自社商材に加えて、他社商材と組み合わせた高度な提案を行っているある企業では、新入社員に対して、難易度の高い案件にいきなりチャレンジさせるのではなく、まずは一つひとつの商材を問題なく提案できるようになってから複合提案を行っていけるよう、育成目標を段階的に設定して育成施策へと落とし込んでいます。この企業では、「新入社員向けスキルマップ」と「既存社員向けスキルマップ」を整備したうえで、“つながり”をもたせています。新入社員向けスキルマップに即したレベルへと成長したら、既存向けスキルマップを適用するというステップアップ方式をとることにより、新入社員の即戦力化だけでなく、モチベーション向上にも寄与する取り組みとして社内で認知されています。

新任マネージャーの営業力・マネジメント力を同時に強化

「すぐれたプレーヤーが必ずしもすぐれたマネージャーになれるわけではない」というのは営業組織に限った話ではないですが、ある企業でも、ハイパフォーマーから昇格したマネージャーのマネジメント力に課題がありました。その対策として、マネージャー候補者に早期にメンバー向けスキルマップとマネージャー向けスキルマップの両方を適用して、「プレーヤーとして成果を創出するための育成」と、「マネージャーとしての資質を見極める取り組み」を同時並行で行なっています。両スキルマップを意識した活動は、本人の負担が大きくなりがちですが、マネージャーとして期待されているという前向きな気持ちも醸成しやすく、結果として、成長意欲高く取り組みに参画しているメンバーがほとんどです。実際に、高い目標達成を意識しながらも、後輩への適切な指導も行うことができるようになり、組織としての営業力底上げにも寄与しています。

8.まとめ:営業組織と人の持続的な成長の鍵となるスキルマップ

これまでお話ししてきたように、営業スキルマップの作成、活用により、役割や期待される成果に対応した「効率的かつ効果的な育成」が可能となり、結果として営業組織と人の持続的な成長が期待できます。スキルマップを活用したセールスイネーブルメントの効果について、データで実証されているお客様も増えています。「新しい売り方を模索しているが具体策が見えてこない」「新入社員が思うように育たない」「今の育成ではメンバーの能力値や成果のばらつきが解消されない」などといった課題への解として、まずはスキルマップ作成に着手してみてはいかがでしょうか。

関連記事

Enablement Insightへの
ご登録はいかがですか?

国内外のEnablementの最新動向や事例、
特別イベントのご案内等、お役立ち情報を定期的にお届けします

     
error
success

お悩みの方は
お気軽にお問い合わせください

Enablement Appの実際の
画面を体感できます

デモを申し込む

導入事例や、Sales Enablementが解決する課題などをまとめた資料一覧もぜひご覧ください。

chevron-small-up