いま期待されるフィールドセールスとは?環境変化に負けない新しい営業スタイルへ

代表取締役 / 共同創業者 岡安 建司

いま期待されるフィールドセールスとは

近年の営業DXの加速により、MAやSFA、CRMなどのセールステックを導入する企業が一段と増え、顧客情報の取得や蓄積されたデータの活用、組織間連携がしやすくなりました。

組織間での情報共有がシームレスに行えるようになったことで、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスそれぞれが専門スキルを発揮し、会社収益の最大化を目指す「営業分業制」への移行を検討する企業もさらに増えてきた印象です。

本記事では、事業環境の変化にともない、旧来の営業スタイルからの脱却を図るべく多くの企業で見直されている「フィールドセールス」について、弊社のイネーブルメント支援の経験も踏まえつつ解説します。

1.フィールドセールスへの期待が高まっている背景とこれまでの営業との違い

これまでの営業といえば、顧客とのアポイント獲得に始まり、顧客の課題ヒアリング、提案資料の作成、決裁者へのプレゼンテーションに加え、社内関連部門のプロジェクト管理や事務処理、サービス導入後の活用支援など、営業プロセス全般においてありとあらゆる業務を担うのが一般的でした。

しかし、これらすべての業務を一人でこなすとなるとその業務量は膨大で、緊急を要する目先の業務に追われてしまい、経営が本来営業に期待している「新規顧客の獲得」や「既存顧客からの新規案件の掘り起こし」などが十分に行えないといった課題が散見されるようになりました。

これらの課題を解決すべく、「営業成果の創出」に注力する役割として期待されているのが「フィールドセールス」です。

2.導入が進む営業分業制とフィールドセールスの役割

THE MODEL(ザ・モデル)型営業組織の浸透

近年、営業生産性の向上や効率化を目的に「THE MODEL(ザ・モデル)型営業組織」(営業分業制)への移行を進める企業が増えています。

もともと米セールスフォース・ドットコム社(現セールスフォース社)が導入していた営業分業制が、SaaS企業を中心に「THE MODEL」として日本でも浸透しはじめたことがきっかけですが、営業プロセスをマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4つに分割し、それぞれが求められる役割に対し専門性を発揮し成果を追う取り組みは、次第にさまざまな企業で受け入れられるようになってきました。

分業制においては、マーケティングが獲得した見込み顧客に対し、インサイドセールスが個別アプローチで購買意欲を高めた状態で商談へとつなぎ、フィールドセールスが提案からクロージングまでを担います。獲得した顧客に対しては、カスタマーサクセスがサービスの活用支援をしながら、継続利用やアップセル、クロスセルへと促していきます。

営業分業制における各部門の役割と指標

フィールドセールスに求められる役割

企業規模や扱う商材などによって異なるケースはあるものの、一般的には、営業プロセスのうち「商談化した案件を受注させるまで」を担うのがフィールドセールスです。

旧来の営業と比較し営業活動に割ける時間が増えることで、商談の量や質が向上するだけでなく、精度の高い売上予測や商談の進捗に合わせた適切な顧客支援が可能となり、安定的なパイプラインの創出が見込めるようになります。

また、組織としての役割や目標が明確化されることで、個人の裁量に依存しない戦略的な営業活動が実現します。

3.旧来の営業から脱却できないフィールドセールスの課題

営業分業化に成功する企業が存在する一方、分業制を導入しても旧来の営業のあり方から脱却できず、フィールドセールスが本来の役割を果たせないまま非効率な営業活動を行ってしまっているケースも少なくありません。

フィールドセールスが機能しない理由として、ここでは代表的なものを2つご紹介します。

前工程(マーケティング・インサイドセールス)から得た情報の活用不足

マーケティングやインサイドセールスでは、見込み顧客に対し、自社のサービスや製品への興味関心度合いによって最適なコミュニケーションをとりながら、購買意欲を高めていく取り組みを行なっていますが、昨今のMAの発展や進化により、見込み顧客が抱える課題やニーズ、興味関心が高いサービスなど、個々の状況を細かく把握することが可能になりました。

従来のマスマーケティングや単なるテレアポでのコンタクトとは異なり、One to Oneマーケティングの実現や精緻な課題ヒアリングを行なった上でのアポイント獲得など、前工程の顧客コミュニケーションが高度化した結果、フィールドセールスに引き継がれる顧客情報の精度が格段に上がりました。

しかしながら、分業制がうまく機能していない営業組織を見てみると、フィールドセールスの多くが従来のスタイルのまま営業活動を行っており、前工程で得た貴重な情報を活用しきれていません。

顧客にとっては既知の自社情報やサービス概要を、初回アポイント時に改めて説明してしまったり、すでに顧客から取得済みの課題について再度ヒアリングを実施してしまうなど、非効率どころか、マーケティングやインサイドセールスが築き上げてきた顧客との信頼関係を損なってしまうような営業活動が行われていることさえあります。

後工程(カスタマーサクセス)への連携不足

カスタマーサクセスは、既存顧客のサービス継続を促すためのサポートや関連サービスへの展開、新規案件の掘り起こしなどを主に担っていますが、SFAやCRMの発達により、サービス検討経緯や、解決したい課題、目指す姿など、これまで営業個々人の中でブラックボックス化しがちだった顧客情報がシームレスに連携されるようになりました。

しかしながら、SFAやCRMを導入しても、商談概要や提案内容しか入力されていないなど、用途が営業側の活動記録に留まってしまっていることも多く、後工程のカスタマーサクセスへの情報連携がうまくいっていないケースも少なくありません。

結果として、既存顧客への提案や手続き時にもカスタマーサクセスをフィールドセールスがサポートしなければならない状況に陥り生産性を下げてしまったり、カスタマーサクセスが顧客と信頼関係を築くことに難航し解約率が上がってしまったりといったリスクが生じてしまうのです。

4.フィールドセールスを効果的に機能させるためのポイント

このような状況に陥らないように、ツールやデータの活用を促進することや組織間の連携を強化することはとても重要ですが、ここからは、さらにフィールドセールスを効果的に機能させていくポイントについてご紹介します。

フィールドセールスの役割と目的の明確化

従来営業とは別の役割として存在していたマーケティングや、営業分業化にともない新しく立ち上がったインサイドセールス、カスタマーサクセスは、その役割が比較的具体化されている傾向にある一方で、フィールドセールスは、これまでの営業の延長と位置付けられたまま、同じミッションを背負い動き方を変えられずにいるケースがあります。

ある企業では、「新規案件の拡大」を目的に分業制を取り入れ、フィールドセールスを組織として立ち上げたものの、「受注額の増加」という従来の役割をそのまま引き継いでしまったため、容易にコンタクトが取りやすい既存顧客・既存案件にばかり注力する傾向を変えられずにいました。インサイドセールスが獲得した新規商談の成約率もなかなか上がらず、新体制がうまく機能しない状況が発生しました。

そこで、フィールドセールスの役割を大きく見直し、「新規顧客からの新規案件獲得」や「既存顧客からの新規案件獲得」を最大のミッションとして再始動しました。目標も受注額だけでなく、新規案件を創出した数と見込み額を中間指標として設定、管理するようにしました。

また、新たな目標を達成するために営業に求められる行動の定義や行動できるようになるための育成課題の抽出、課題に即した育成施策の提供とその効果検証をあわせて行うセールスイネーブルメントにも取り組むことで、新規案件獲得数の増加につなげることができました。

こうして求められる成果を達成することで、営業現場のモチベーションも向上するといった好循環が生まれています。

新たな役割・目的に即した営業スタイルへの変革

従来の営業は、公開されていない情報を顧客からいかに収集するか、その情報を得るための信頼をいかに獲得するかなど、対面コミュニケーションなどを通じた直接的な顧客との関係構築が重要なスキルとされてきました。

しかしながら昨今は、前述のとおり、仕組みの高度化や高機能ツールの導入により、顧客の精緻な情報の取得が可能になったことで、顧客に会う前に収集した情報を正しく分析し、顧客ニーズや課題について精度の高い仮説を構築するスキルの重要性が増しています。

環境激変下、顧客ニーズや自社の戦略を踏まえ、営業スタイルを最適化しつづけることは今後より求められるようになるでしょう。

ある企業では、長きにわたり、顧客のニーズや課題に適応する自社サービスや製品を提案するいわゆるプロダクトセリングで成果を上げてきましたが、競合他社や顧客の情報収集能力の向上により、これまでのやり方では今後の成長が見込めなくなることが想定される中、営業スタイル変革の必要性に迫られていました。

そこで、前工程から得た顧客情報を基に顧客のニーズや課題を仮説構築し、顧客とのディスカッションを通じて課題解決を行ういわゆるソリューションセリングへと営業スタイルを変化させました。

営業スタイル変革を実現させるためにセールスイネーブルメントに取り組み、新たな役割に求められる「行動・スキル・知識」を整理し、それをベースとした育成施策を行った結果、後のデータ検証でソリューションセリングに関連するスキルが向上したメンバーほど、営業成果も向上しているという相関が確認されました。

また、ある企業では、顧客の企画段階から案件創出に関わるために、前工程から得た顧客情報に加えて、企業戦略や事業環境の変化についてもあらかじめ調査を行い、顧客のビジネスそのものの将来像を仮説構築したうえで顧客と議論し合意形成を図っていくビジョンセリングへとシフトし、他社との競争優位を図りました。

ビジョンセリングは、翌年や翌々年を見据えた継続的な商談創出を実現するための営業スタイルとして注目されています。

セールスアプローチの使い分け

5.まとめ

フィールドセールスは、営業分業制において、前後工程との連携やデータ活用により、商談の量や質を向上し、より多くの成約を生むことが期待される役割です。

フィールドセールスの専門性を高め、有効に機能させるためには、組織間の連携強化はもちろん、その位置づけを旧来の営業の延長として捉えるのではなく、新たに求められる役割に即した営業活動を行えるよう、組織全体で支援していくことが重要なのです。

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