イネーブルメントで「あるもの」「ないもの」

代表取締役社長 / 共同創業者 山下 貴宏

イネーブルメントであるもの・ないもの

昨今セールスイネーブルメントに取り組む企業がますます増えてきています。その認知が高まる一方で、セールスイネーブルメントの意味が幅広かつ抽象度も高く、言葉の捉え方が人によってばらばらです。「営業強化」全般をイネーブルメントという意味で使っていることもあれば、個別具体的に「営業トレーニング」をイネーブルメントの意味として使っているケースもあります。どちらもイネーブルメントに含まれますが、「何がイネーブルメント」で「何がそうではない」のかよくわからない、といった声も聞こえてきます。キャッチーな英単語はバズワードとして瞬間的に広まりますが、意味が曖昧なままだとそのわかりづらさゆえにゆくゆく使われなくなります。

本稿では、イネーブルメントで「あるもの」と「ないもの」を整理し、皆さんの企業にとってのイネーブルメント検討につなげて頂きたいと思います。

1.「セールスイネーブルメントの定義」に含まれる「要素」

「セールスイネーブルメントの定義」で海外でのイネーブルメントの定義についてご紹介しました。リサーチ会社やイネーブルメントベンダーが様々な定義を提示していますが、共通要素を抽出すると以下の3つに集約されます。

①営業成果起点
②体系的/実践的プログラムの提供
③データの活用

セールスイネーブルメントの共通要素

ここでは、イネーブルメントとは「営業パーソンが期待される成果を出すために、知識や情報、ツール、データの力を使いながら、営業支援を行う包括的で有機的な取り組み」であることを示しています。

セールスイネーブルメント実現のために、弊社では特に“営業パーソンの行動変革”にフォーカスしており、「成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組み」が鍵となると考えています。

2.イネーブルメントの「要素」をつなげた育成施策の展開

では、「成果を出す人材育成」のために、先ほどの3要素はどのようにつながるのでしょうか?以下のようなサイクルを回していくことになりますが、ポイントは「成果-行動-知識スキル」を繋げることにあります。

イネーブルメントの要素をつなげた育成施策の展開

※令和2年8月7日(2020.8.7)「営業人材開発支援システム、営業人材開発支援方法、および営業人材開発支援プログラム」の名称で特許取得済みです。特許第6746184号(P6746184)

1.どのような成果を達成する必要があるのかを考える(営業成果起点)
2.成果達成のために必要な行動を定義する
3.その行動を取れるようになるための知識/スキルを習得する(体系的/実践的プログラムの提供)
4.知識習得、行動の変化、成果達成状況をデータで検証する (データ活用)

上記サイクルの具体例をみてみましょう。

例えば、成長スピードが早いベンチャー企業では次のようなイメージです。

1.売り上げ180%成長を達成する必要がある(営業成果起点)
2.中途営業を毎月10名採用し、入社3ヶ月で主力商品を売れるようにする
3.3ヶ月で立ち上がるオンボーディングプログラムを提供する(体系的/実践的プログラムの提供)
4.オンボーディングプログラムの完了率と入社3ヶ月後の目標達成率をデータで検証する(データの活用)

また、他の例も見てみましょう。例えば、大手IT企業において、重点顧客からの取引額拡大を想定した場合は次のようなイメージです。

1.事業成長110%のうち、重点顧客100社からの取引金額を30%向上させる(営業成果起点)
2.業界No.1主力ソリューションを軸にしたソリューションセリングから、マルチプロダクトによるVision Sellingができるようにする
3.既存顧客拡大につながるアカウントプランとVision Sellingプログラムを提供する(体系的/実践的プログラムの提供)
4.Vision Sellingのスキルレベルを測るとともに、既存顧客における新規案件金額、平均取引額を検証する(データの活用)

簡略化して、2つほど営業文脈における例を提示しましたが、ここで着目いただきたいのは、イネーブルメントに必要な3つの「要素」が繋がっていること、そして育成施策が独立単体で提供されているわけではなく、ビジネスの目的に始まり、ビジネスの結果で検証されている点です。旧来の人材育成では、階層別教育などを通じて全社共通の汎用プログラムが提供されてきましたが、その目的や検証ポイントは曖昧なことがほとんどでした。イネーブルメントは、ビジネスの起点と終点が置かれ、データで検証していく点に特徴があります。そして、これがイネーブルメントで「あるもの」と「ないもの」を分ける境界線となるのです。

3.イネーブルメントで「あるもの」と「ないもの」

ここまでの考察をふまえ、イネーブルメントで「あるもの」と「ないもの」をまとめたいと思います。

イネーブルメントであるものとないもの

「イネーブルメントであるもの」とは、達成すべきビジネスの成果、特に定量的なデータを起点に構築されたプログラムで、営業がすぐに立ち上がれるように実践的で体系化されたコンテンツが用意され、トレーニングが終わったあとの現場フォローが地続きで提供され、ITを活用し誰がどこまで進んでいるのかや育成と成果がつながっているのかが可視化され、効果検証をおこなうことで育成のPDCAを回していく仕組みそのものです。

達成すべき成果が起点なので、育成効果の検証ができ、「やらなくてはならない育成」になります。まさに「MUST HAVE」の育成がイネーブルメントです。

一方、「イネーブルメントではないもの」は、例えば単発のトレーニング、実践的ではないコンテンツ、トレーニングをしたもののその後のフォローがまったくない、ITが活用されておらずいつ・誰が・どんなトレーニングを受けたかがわからない、KPIは育成目的のサーベイだけである、といったものなどです。
もちろんないよりはあった方がいいと思いますが、「NICE TO HAVE」程度のもの、断片的、突発的で、つながっていないものはイネーブルメントとはいえません。

ここまで見てきた通り、トレーニングから行動の変化、結果としての成果達成まで、営業成果に向けて一気通貫で取り組むプログラムこそがイネーブルメントなのです。

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