“持続的な営業成果創出のための組織・人材変革”として成長企業を中心に導入が進むセールスイネーブルメントですが、その守備範囲は非常に広く、営業成果につながることであれば際限なくさまざまな施策がそのスコープに入ってしまうといっても過言ではありません。実際に、私も前職でイネーブルメントの実務を担当していた際には、現場の営業パーソンの提案書レビューや顧客とのミーティング支援などに携わることもありました。これはこれでもちろん価値のあることですが、これではイネーブルメント担当者が何人いても足りなくなるのは想像に難くないでしょう。イネーブルメントチームは人数を最小限に抑えつつもプログラムの展開と効果をスケールさせる必要があるため、提供する支援策には優先順位をつけていかなければなりません。
セールスイネーブルメントチームの人選| Enablement Insight >>
限られたリソースでイネーブルメントの効果を最大化させるためには、前提となる営業パーソンの“イネーブルする(=成果につながる)ステップ”を想定してプログラムを設計する必要があります。
下の図では、「学習する」「実践・適用する」「効率的に動く」「成果につなげる」という、営業パーソンの行動変容ステージに適応した4つのイネーブルメントアプローチ「トレーニング」「コーチング」「ツール/ナレッジ」「システム」について整理しています。
営業が新しい業界やソリューションを担当する際に「学ぶ」というステップが必ず発生する。このためにイネーブルメントチームは、「トレーニング」を提供する
多くの営業はトレーニングを受けただけでその知識やスキルをすぐに実践できるわけではないため、トライアル・アンド・エラーを繰り返しながら自分のものにしていくステップが欠かせない。このステップを効果的に進めるうえで「コーチング」というアプローチが効果を発揮すが、これは、日々の業務を最も間近で見ている営業マネージャーが実施することが望ましい
営業スキルが上がればより効率的に業務を進められるようになる。その支援のために、イネーブルメントチームは“すぐに使える営業の武器”を提供する。提案書のテンプレートや競合対策資料、市場データ、顧客事例など、提案シーンですぐに使える「ナレッジやコンテンツ」がこれに該当する
①②③のプログラムを提供して終わりではなく、それらが育成データとして蓄積できないかも確認する。また、効率的に共有できるものについては、システムを通じて誰もがアクセスしたり確認できるようにしておくことが望ましい。これらの育成データを営業成果データと付き合わせることで“成果と育成の効果検証”が可能になる
それぞれについてもう少し詳しくみてみましょう。
トレーニングは、対象者によって「オンボーディングトレーニング」と「営業トレーニング」の2種類を整備する必要があります。
中途社員の入社後早期立ち上がり(=売上をあげられるようになること)を目的としたトレーニングプログラム。学びを現場ですぐに活用できるよう、実践的なプログラムを体系的に設計する必要がある
最新の売り方/売りモノを理解するためのトレーニング。会社の製品ラインナップは日々更新され、顧客のニーズも変化していく中で、営業は最新情報を常にキャッチアップしておかなければならない。複数案件を日々追いながら動き方を柔軟に変えていくことが求められるため、ここで提供するトレーニングもすぐに使える実践的かつ体系的な内容に設計する必要がある
当然のことながら、トレーニングプログラムは一度作れば終わりではなく、環境変化に合わせて都度更新していく必要があります。そのため、「コンテンツの開発・更新・デリバリー」を担当するメンバーは可能な限り専任でアサインすることを推奨します。
データを活用した営業トレーニング開発の勘所| Enablement Insight >>
営業メンバー育成の早期立ち上げを実現!オンボーディングプログラム構築の勘所| Enablement Insight >>
営業メンバーへの知識やスキルのインプットはイネーブルメントチームの役割ですが、その学びを現場で活用させ、能力をさらに引き上げるのは営業マネージャーの重要な役割です。ここで必要となるスキルが「コーチングスキル」ですが、営業マネージャーによって大きくばらついているのが実情ではないでしょうか。また、組織によっては「コーチング」と日々の案件確認のための「商談レビュー」を混在してしまっているケースもあります。イネーブルメントチームは、営業マネージャーがメンバーに対して適切な「コーチング」をできるように支援する役割も担っています。
ここでは、営業マネージャーに必要な2つのコーチングスキルについてご紹介します。
単なる数字確認の「商談レビュー」ではなく、商談情報やダッシュボード情報を分析的に活用し、“営業メンバーが主体的に商談の次のアクションを考えられる”ように仕向けていくアプローチ。商談状況を理解しつつ、顧客視点での“問いかけの技術”が必要とされる
商談実務に即して、営業メンバーの主体性を引き出しながら「スキル習得と向上」を支援するアプローチ。定性情報だけでなく、データに基づく育成課題と学習進捗を把握したうえで、メンバーのスキルレベルを的確に理解し、次の一歩を促すアドバイスをおこなうことが求められる
育成を促す営業コーチング| Enablement Insight >>
イネーブルメントチームは“すぐに使える営業の武器”も提供します。この際、武器共有のための「仕組み」だけを提供することもあれば、イネーブルメントチームが「コンテンツ」自体を作成して提供することもあります。
このツール/ナレッジの取り組みは、いわゆる「ナレッジマネジメント」と呼ばれる領域ですが、ここで一つ運用上のポイントを抑えておきたいと思います。
ナレッジマネジメントは、数々の企業が取り組んでいるテーマですが、その実課題も散見されます。うまくいかない理由を紐解いていくと、「ナレッジ共有システム」(いわゆる「システムツール」)ありきで話が進んでしまったというケースが多いことに気づきます。たとえば次のようなケースです。
● 「まずコンテンツを入れる箱を用意しましょう」
● 「そこにコンテンツをカテゴライズして格納しましょう」
● 「既存の共有フォルダにある資料も接続しましょう」
● 「あとは社内で共有を促しましょう」
システムツールは必須ですが、ツールはあくまで手段であり。ユーザーである営業パーソンにとって重要なのは、“使えるコンテンツが”“欲しい時に”“すぐに手に入るかどうか”です。
ナレッジマネジメントをうまく機能させるためには、鮮度の高いコンテンツが一定頻度で収集されている必要がありますが、これが思いのほか難しいと感じている方も多いのではないしょうか。
理由は簡単で、コンテンツの提供元である営業パーソンに情報を提供する“インセンティブ”がないからです。多忙な中、どのような目的で使われるかわからない資料(しかも大抵は顧客情報が入っている)を積極的に提供する人は少なく、結果としてナレッジ共有システムにコンテンツが集まらなくなり、誰もアクセスしなくなってしまうのです。
ナレッジマネジメントを機能させるうえで、実効性の高い方法を2つご紹介します。
ナレッジマネジメントマネージャーの役割は、前述のような“情報流通のサイクル”を意図的に回すこと。情報を集めて、誰もが使える体系に再整理し、利用を促す
評価制度との紐付けでは、ナレッジ提供した営業パーソンを記録し、組織全体への貢献として評価する
このような仕掛けに加えて、ナレッジ共有システムがあれば全体が有機的に機能するようになる確率は各段と上がるでしょう。
イネーブルメントプログラムを構築するうえで期待されるのは、“営業育成”に関わるデータを統合的に管理し分析することです。この領域は欧米で先行していますが、日本でも昨今注目されはじめています。これまで示してきたような「トレーニング」「コーチング」「コンテンツ」などのデータを蓄積することで、全体のトレンドを把握したり、「営業成果」に関するデータと組み合わせてイネーブルメント施策と成果の相関を分析し、次の改善策の検討につなげていくことが可能となります。
たとえシステムを導入しても、中身がなければ営業の“行動変容”は促せないため、導入の順番に気をつける必要があります。ある程度育成コンテンツが整備され、成果のデータも蓄積されているという場合には、システムを使ってスケールさせるタイミングといえるでしょう。
ここまで「イネーブルメントプログラムの4つの柱」についてご紹介してきましたが、取り組む範囲は非常に多岐にわたります。イネーブルメントの目的は“営業成果の最大化”にあります。その目的に照らして考えた際に、皆さまの会社で「必要だが大きく不足しているプログラムは何か?」を整理し、優先順位をつけながら取り組まれることをお勧めいたします。
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