昨今、「人の成長を通じた持続的な営業成果創出の仕組み」であるセールスイネーブルメント (Sales Enablement)を導入する企業が日本でも増えていますが、その支援対象はその名のとおり営業部門です。
一方、先端を行く欧米や一部の日本企業では、インサイドセールス部門やカスタマーサクセス部門など、イネーブルメントの支援対象範囲が「顧客接点をもつ収益部門全体」に拡大しつつあり、レベニューイネーブルメントへの注目が高まりを見せています。
レベニューイネーブルメント (Revenue Enablement)とは、「顧客接点をもつ収益部門全体を対象としたイネーブルメント」のことをいいます。
なぜ、今レベニューイネーブルメントが注目されているのでしょうか。
まず、SaaS企業を中心に営業組織の分業化が進み、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスそれぞれが専門スキルを発揮し自部門の指標を追い、会社の収益に貢献する体制へと移行したことがあります。「商談化から案件受注」まではもちろん、前工程の「興味関心度合いが高い見込み顧客との商談創出」や、受注後の「顧客に製品・サービスを継続利用してもらうための支援」が収益を大きく左右するため、イネーブルメントの支援対象は営業以外の収益部門にも広がっていったのです。非常に合理的かつ自然な流れといえるでしょう。
さらに、CRO (Chief Revenue Officer:最高収益責任者)という、「会社の収益全体に責任をもつ」重要なポジションが登場したことも、レベニューイネーブルメントの取り組みを加速させました。CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)やCHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)、CTO(Chief Technical Officer:最高技術責任者)など、各機能において最高責任をもつCxOとは異なり、CROは機能に囚われず、俯瞰的な視点で企業の収益最大化を目指し戦略を設計します。全体最適で組織間のバランスをとるCROにとってレベニューイネーブルメントは強力な武器となりました。
レベニューイネーブルメントの主な支援対象部門は、「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の他に「パートナー/アライアンス」などもあります。
ここでは、レベニューイネーブルメントの役割や追うべき指標について、セールスイネーブルメントと比較しつつ整理したいと思います。
セールスイネーブルメント Sales Enablement | レベニューイネーブルメント Revenue Enablement | |
意味 | 営業が売上を上げ続けるための 仕組みや取り組み | 収益部門が収益を上げ続けるための仕組みや取り組み |
カウンターパート | Chief Sales Officer (CSO) 営業責任者 | Chief Revenue Officer (CRO) 収益責任者 |
支援対象部門 | 営業 | ・インサイドセールス ・フィールドセールス ・カスタマーサクセス ・パートナー/アライアンス |
意識する顧客のプロセス | 購買までの意思決定プロセス (Buying Journey) | 認知-購買-継続利用全体にかかわる意思決定プロセス (Customer Journey) |
指標 | 売上に関わる営業指標 | 収益に変わる指標。具体的にはIS/FS/CS等の部門の指標 |
イネーブルメントプログラム | コアとなるのは以下。 ・トレーニング ・コーチング ・ツール ・システム ※ただし、コンテンツは 支援対象部門によって異なる | 左に同じ |
指標について少し補足しましょう。レベニューイネーブルメントが貢献する収益部門の指標には次のようなものがあります。
それでは、レベニューイネーブルメントを自社に取り入れる場合、どのようなステップを踏めばいいのでしょうか。
大きく4つのステップでご紹介します。
① 特定部門でイネーブルメントプログラムの型作り
② 収益を構成する指標の中からインパクトの大きい「重点改善指標」を特定
③ 対象部門向けのイネーブルメントプログラムを提供
④ 指標の改善進捗をデータで検証
まず、特定の部門(フィールドセールスなど)でイネーブルメントプログラムの型を作りましょう。レベニューイネーブルメントは支援対象が広いため、さまざまな部門の個別課題に対応していてはスケールしません。モグラ叩き状態になり、イネーブルメントメンバーが何人いても足りなくなります。「成果と育成をつなぐイネーブルメント成功パターン」を作り、それを横展開するようにしましょう。このステップだけでもカタチになるまで相応の時間を要しますので、取り組む目的が明確な場合、早めに着手することをお勧めします。
つぎに、特定部門のイネーブルメントの型化ができたら、レベニューイネーブルメントへと対象を広げます。イネーブルメントチームの基本動作は、“成果起点”です。「収益最大化という成果」に対して、改善すべき指標がどこにあるのかを明確にします。
ここで一つ考えるべきことがあります。日本ではCROというポジションが一般化していないため、レベニューイネーブルメントの立場では、「誰と収益の改善指標をすり合わせるか?」がポイントになります。大きくは2つあります。
トップダウンかボトムアップのどちらか、また又はその両方で、改善すべき重点指標を特定しましょう。
そして、指標が特定できたら、その指標の責任を担う部門に対してイネーブルメントプログラムを提供します。本記事では詳細は割愛しますが、次のようなプログラムを開発・提供することをお勧めします。
最後に、イネーブルメントプログラム実施後は、2つめのステップで定めた「重点改善指標」が改善したかどうかをデータで検証しましょう。SFAデータ、CSデータ、基幹システムのデータなどを活用して、収益指標が改善に至ったかどうかを確認します。
ここまでレベニューイネーブルメントの実践ステップを見てきました。イネーブルメントがこれからという企業はまずは特定部門から着手し型化を進め、ある程度イネーブルメントが進んでいる企業はレベニュー全体に支援スコープを広げていき、会社全体のビジネス成果の最大化に貢献していきましょう。
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