営業組織に求められる最大のミッションは、営業予算の達成と売上の最大化です。企業における最重要ミッションともいえますが、そのミッション達成のために営業組織をけん引する役割を担う、営業マネージャー。事業の成長も見据えつつ、部下育成や組織改革に励み、時にはプレイングマネージャーとして現場にも立つ。
不確実性の時代に、限られたリソースを有効活用し、持続的に成長し続けられる強い営業組織を作るためにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。
営業現場からセールスイネーブルメント部門にてイネーブラーを経験後、現在営業マネージャーとして活躍されている、セールスフォース・ドットコム コマーシャル営業 第二営業本部 営業本部長の西田晶子さん。西田さんと弊社代表山下によるイネーブラー対談を通じて、営業における新たなキャリアパスのあり方と、イネーブラーを経由することで得られる価値、営業マネージャーに求められる資質など、実体験を基に赤裸々にお話しいただきました。
山下:まずは、西田さんのご経歴について教えてください。
西田:2006年にリクルートからスピンアウトした会社に新卒入社し、業種・業界を問わず中途採用広告を売る営業を4年間経験しました。飛び込み営業やテレアポにはじまり、大手企業の営業にも携わりました。
そして2010年にセールスフォース・ドットコムに転職し、インサイドセールスとフィールドセールスを経験した後、2016年に当時山下さん率いるセールスイネーブルメント部門に異動、イネーブラーとしての実績を約1年間積みました。イネーブルメント部門卒業後は、3年ほど東名阪以外の地方担当エリアを担当するファーストラインマネージャーを経験し、2019年から現在の中小企業向けの営業を担当するコマーシャル営業のセカンドラインマネージャー(営業本部長)となりました。
山下:フィールドセールスからインサイドセールス、そしてイネーブルメントを経由して現在は営業マネージャーという、営業に関わるすべてを経験されているような印象です。営業職種をフルコースで経験されている方はまだ稀少で、西田さんのキャリアパスはロールモデルの一つだと思います。その中でも珍しいイネーブラーとしてのご経験はやはりマネジメントにも活きていますか?
西田:そうですね。セールスイネーブルメント部門では、パートナー企業様のセールスイネーブルメントのご支援をしたり、社内のイネーブルメントにも取り組みましたが、その時の経験が確実に今に活きています。イネーブルメント部門を経験することが営業マネージャーを目指す方はもちろん、営業職にとってもっと一般的になればいいな、と思います。
営業から他の部門の職種にチェンジする人も多いですが、営業のキャリアパスは一つではない、ということをお伝えしたいです。
山下:少し話を戻します。西田さんはフィールドセールスとして成果を挙げ、2016年にイネーブルメント部門へと異動されましたが、異動はご自身で希望されたのですか?初めてイネーブルメントというテーマに出会ったときに感じたこともぜひ教えてください。
西田:はい、自ら希望しました。当時は、社内公募制度が始まったばかりの頃で、望むポジションに手を挙げて異動させてもらう、ということがまだ真新しいときでした。これまでの営業経験の中で成果は出ていましたが、マネージャーを目指す前に自分のスキルの棚卸しをしたり、体系化する時間が欲しいな、と思っていました。
山下:具体的に、どのような懸念があったのですか?
西田:そうですね。自分自身の知識や経験の体系化ができていないまま営業マネージャーになると、マネジメントが自己流になってしまって価値が半減するのではないかと不安でした。組織横断型で営業知識、スキルを体系化しているイネーブルメント部門に身を置くことで、営業だけでは得られない経験ができるのでは、と思っていました。
他にも、異動を希望した理由として、当時のイネーブルメント部門は外資系コンサル出身者が多かったので、これまで働いたことのない、営業とは違う職種の人と間近で仕事をしてみたかった、という思いもありました。
山下:ここからは、セールスイネーブルメント部門に異動されてから、現在に至るまでのご経験を深掘りしたいと思います。イネーブルメント部門に異動した当初の印象はどのようなものでしたか?
西田:馴染むのに時間がかかりました。これまでの営業組織とは考え方も時間軸も違う、表面的な話をしても納得してもらえない。本質的な部分にたどり着くために、頭の中で何度も因数分解することが必要で、イネーブラーはとにかく深堀るなあ、と感心しました。
山下:イネーブルメントで鍛えた“深堀り”に意味を感じますか?
西田:はい、感じます。むしろ、そこがイネーブルメントの価値だと思っていました。
営業現場視点での考え方やものの見方だけではなく、イネーブルメントにおけるデータ分析や分析結果に基づく施策検討の深掘りがあったからこそ、導き出されたナレッジやスキルをマッピングしたり、スクリーニングしたりと、より効果的で実務的なものを体系化していくことに貢献できたのではないかと思います。
山下:イネーブルメントの経験は、現在の営業マネージャーの仕事にも活きていると伺いましたが、詳しく教えてください。
西田:今の営業組織に何が足りないかの洗い出しや、実際にナレッジを現場にデリバリーする言語化の部分については、イネーブルメント経験があるからこそスムーズにできました。
他部門との棲み分けや、課題の優先順位付け、プラン通りに行かなかったときの軌道修正などの場面において、柔軟な発想や的確な判断ができるようになったのは、イネーブルメント経験のおかげですね。
特に、他部門の関係者を巻き込む必要のある場面においての判断は、イネーブルメントにいたからこそスムーズにできていると実感しています。どの人を頼るのがベストか、この部分は他部門の役割だな、などといった判断です。イネーブルメント部門にいた頃に、組織横断型とはいえ何でもかんでもイネーブルメントでやるわけではない、ということを学んでいました。
山下:組織の全体最適は、まさにマネージャーの腕の見せどころですよね。
西田:はい。営業マネージャーにとって、メンバー育成でも営業成果の中央値向上でも、組織単位であれば実現できることも、組織横断型のビッグインパクトを生む解決策を打つことは容易ではありません。
「何だかうまくいかない」と壁にぶつかった際には、課題の解像度を上げ、施策範囲を広げてみることも重要です。
山下:イネーブルメント時代に西田さんが取り組んだ中で、印象的なチャレンジがあれば教えてください。
西田:2つあって、1つ目はパートナー企業様向けイネーブルメントプログラムの立ち上げです。パートナー企業様にナレッジをデリバリーしていくことの重要性は感じていましたが、たくさんあるナレッジが現場にきちんと行き届かないと意味がないので、どのようにデリバリーしていくか工夫を凝らしました。
2つ目は、デリバリーするナレッジ、プログラムをリバイスし続けることです。見直しをかけ続けることで、より精度が上がり、現場にとって本当に意味のあるものになるのです。
山下:パートナー企業様のイネーブルメントは、社外への取り組みかつ、初めてのプログラム立ち上げという意味では非常に難易度の高いチャレンジでしたよね。そんなチャレンジを経た西田さんにとって、イネーブラーとマネージャーの違いはどんなところにあると思いますか?
西田:そうですね。本来、「売上」と「育成」はつながっていて、人が育つから成果に繋がるのだと思っています。
しかしながら、営業マネージャーの意識は当然「売上」にあり、短期間での成果創出に追われがちです。一方、イネーブラーの意識は「営業組織全体の底上げ」にあります。虫の目鳥の目ですね。営業が現場視点での課題解決に集中できるよう、イネーブラーは組織を俯瞰して見ています。育成なくして持続的な事業の繁栄、発展はなしえないため、成果起点の真の人材育成を考える際にはイネーブラーの存在はやはり大きいと思います。
山下:フィールドセールスだけでなく、インサイドセールスやカスタマーサクセス、セールスオペレーションなど、営業にまつわる職種も広がりを見せていますが、営業マネージャーにとってのイネーブルメントはどのような可能性を秘めているのでしょうか。
西田:営業マネージャーを目指している方であれば、ぜひイネーブルメントを経験してから営業組織に戻ることをおすすめします。
営業マネージャーになる際に営業現場での経験が糧になることは間違いないですが、自身の知識、スキルの体系化ができていないと、部下メンバーにどのようにわかりやすく説明するのか、どんな順序で説明すれば腹落ちするのかなどが見えにくくなってしまうはずです。
また、現在営業マネージャーに携わられている方であれば、優秀な部下をイネーブルメント部門に送り出すことも選択肢の一つだと思います。
営業マネージャーからすると、ハイパフォーマーのリソースは売上拡大に使いたい、外に輩出したくないという思いも当然ありますよね。これは優秀な部下を持つマネージャーとしては当然の思いだと思うのですが、まずは、営業から一度イネーブルメントに人材を送り出してまた営業部門に戻す、知見を還元するというサイクルを作らないといけないと感じています。その先により強い営業組織ができあがることを信じています。
山下:昨今の激しい環境変化で、営業はもちろん営業マネージャーに求められるスキルも複雑化し難易度が一層上がってきています。今後営業マネージャーはどのような役割を担う存在になっていきそうだと思いますか。
西田:おっしゃる通り、商談・顧客マネジメントの難易度は日に日に上がってきています。それでも売上達成というミッションからは逃れられません。目標と現状のギャップを正しく把握し、そのギャップを埋めるために、何をすべきか俯瞰して全体最適で考えてみる。現場でカバーできる部分と他部門に協力を仰ぐ部分を見極める。激しく変化する環境への適応力がまさに試されています。
営業マネージャーも学び続けなければなりません。
山下:今後、西田さんが取り組んでいきたいチャレンジはどんなことですか?
西田:やはり人の成長がビジネスを支えると確信しているので、人の成長を支えられるような組織運営をしていきたいと思っています。
弊社では、イネーブルメント部門と営業部門協業で、毎週育成会議を実施していますが、頻度が多いとは思っていません。営業マネージャーから吸い上げた課題をイネーブルメント部門に共有したり、イネーブルメント部門から提供されたトレーニングが現場で活用されていたかの確認を行ったり、活用されていないのであれば改善策を一緒に検討したりと、育成にフォーカスできる贅沢な時間だと思っています。
それくらい、営業組織の人材育成には深い意味があると考えていて、より有意義なものとしていきたいです。
山下:営業からイネーブラー、営業マネージャーという異色のキャリアパスを経て、現場経験と全体最適の視点を融合させたマネジメントに取り組む西田さん。
「“一人ひとりの成長実感”が強い組織を作る」という力強い一言が印象的でした。西田さん、貴重なお話をありがとうございました!
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