営業利益とは、企業が本業でどれだけ稼いでいるかを示す重要な指標です。経営に関わるマネージャー層にとって、営業利益の理解は、効果的な経営戦略を立て、組織のパフォーマンスを向上させる上で欠かせません。
しかし、「営業利益とは何か」「売上総利益や経常利益とはどう違うのか」といった疑問をクリアにしたり、実際の業務にどのように役立つのか、具体的な活用方法を知りたい方も多いでしょう。本記事では、営業利益の定義から計算方法から経営における実務的な活用方法まで、詳しく解説します。
営業利益とは何か
営業利益とは
営業利益とは、企業の本業による活動から得られる利益のことです。具体的には、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた金額を指します。
簡単な計算式で表すと:営業利益 = 売上高 – (売上原価 + 販管費)
この指標は、企業の中核事業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す重要な尺度です。営業利益が高ければ、本業での収益力が強いことを意味し、低ければ、事業モデルや運営方法に改善の余地があることを示唆します。
投資家や経営者にとって、営業利益は企業の実力を判断する上で欠かせない指標です。財務活動や一時的な要因の影響を受けにくいため、企業の持続的な収益力を評価するのに適しています。また、異なる業種や規模の企業間でも比較可能なため、幅広く活用されています。
営業利益の重要性と企業経営への影響
営業利益の役割と経営判断への影響
営業利益は企業経営において中心的な役割を果たします。まず、本業の収益力を直接反映するため、事業の効率性や競争力を評価する上で最も重要な指標の一つです。経営者はこの数値を基に、事業戦略の有効性を判断し、必要に応じて戦略の修正や新規投資の決定を行います。また、部門別の営業利益を比較することで、経営資源の最適配分を図ることができます。さらに、営業利益の推移を分析することで、市場動向や競合状況の変化を把握し、迅速な意思決定につなげることが可能です。このように、営業利益は企業の将来的な成長と持続可能性を左右する重要な判断材料となります。
営業利益が示す企業の健康状態
営業利益は企業の健康状態を示す重要なバロメーターです。安定的かつ高水準の営業利益は、企業が健全な事業基盤を持ち、効率的な経営が行われていることを意味します。特に、営業利益率(営業利益÷売上高)の高さは、競争優位性や価格決定力の強さを反映しています。また、営業利益の継続的な成長は、企業の持続可能な発展力を示し、株主や投資家、取引先などのステークホルダーの信頼獲得につながります。一方、営業利益の低下や赤字は、事業モデルの見直しや経営改善の必要性を示す警告サインとなります。このように、営業利益は企業の現在の健康状態だけでなく、将来の成長ポテンシャルも表す重要な指標なのです。
営業利益の計算方法
営業利益の基本計算式
営業利益の基本計算式: 営業利益 = 売上高 – (売上原価 + 販売費及び一般管理費)
この式は企業の本業による利益を表します。売上高は総収入を、売上原価は商品やサービスの直接費用を、販売費及び一般管理費は間接費用を示します。この計算式により、企業の事業活動の効率性や収益性を直接的に把握することができます。経営者はこの数値を基に、コスト削減や売上増加の戦略を立てることができます。
売上高と売上原価の関係
売上高は企業の総収入を表し、売上原価はその収入を得るために直接要した費用です。
売上高と売上原価の計算式:売上総利益 = 売上高 – 売上原価
売上原価には、製造業では原材料費や製造労務費、小売業では仕入れ値などが含まれます。売上高と売上原価の差額である売上総利益(粗利益)は、企業の基本的な収益力を示す指標となります。この関係を分析することで、価格設定や原価管理の適切性を評価できます。
販管費の計算と営業利益への影響
販売費及び一般管理費(販管費)は、売上を得るために間接的に発生する費用です。主な項目には、人件費、広告宣伝費、賃借料、減価償却費などがあります。販管費の計算は、これらの費用の合計です。
販管費は営業利益に直接影響を与えます。販管費が増加すれば営業利益は減少し、逆に削減できれば営業利益は増加します。そのため、効率的な販管費の管理は、営業利益を向上させる重要な要素となります。経営者は販管費の内訳を精査し、不要な支出を削減しつつ、効果的な投資を行うことが求められます。
営業利益率の計算と活用法
営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合を示す指標です。
営業利益率の計算式:営業利益率 = (営業利益 ÷ 売上高) × 100
この指標は、企業の本業における収益性を表します。高い営業利益率は、効率的な経営や強い競争力を示唆します。活用法としては、同業他社との比較や、自社の経年変化の分析があります。これにより、自社の市場での位置づけや、経営効率の改善度を評価できます。また、部門別や製品別の営業利益率を算出することで、より詳細な事業分析が可能となります。
経常利益との関連性
経常利益は営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益です。
経常利益の計算式: 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用
営業利益が本業の収益力を示すのに対し、経常利益は財務活動を含む通常の企業活動全体の収益力を表します。営業外収益には受取利息や配当金、営業外費用には支払利息などが含まれます。経常利益は営業利益よりも企業の総合的な収益力を反映するため、企業の安定性や持続可能性を評価する際に重要視されます。ただし、本業の収益力を直接見るには、営業利益がより適切な指標となります。
営業利益のトレンド分析
トレンド分析は、時間経過に伴うデータの変化や傾向を観察し解釈する手法です。過去のパターンを理解し、将来を予測するのに用いられます。企業の売上高、利益、市場シェアなどの推移を追跡し、上昇・下降傾向や季節変動を見出します。これにより、ビジネスの健全性や成長性を評価し、戦略立案に活用できます。また、業界比較を通じて自社の位置づけを把握することも可能です。経営判断の重要なツールとして活用されています。
営業利益のトレンド分析の手法
企業の収益性の変化を時間の経過とともに理解するための重要なツールです。以下に、主な分析手法をわかりやすく説明します:
これらの手法を組み合わせることで、営業利益の動向をより深く理解し、将来の予測や戦略立案に活かすことができます。
トレンド分析を基にした経営戦略の策定
営業利益のトレンド分析結果を活用し、以下のような具体的な経営戦略を立てることができます:
これらの戦略を適切に組み合わせ、実行することで、企業は持続的な成長と競争力の強化を図ることができます。重要なのは、定期的にトレンド分析を行い、戦略の効果を検証しながら、必要に応じて軌道修正を行うことです。
様々な利益と営業利益の違い
売上総利益(粗利益)
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた金額です。計算式:売上総利益 = 売上高 – 売上原価 これは企業の基本的な収益力を示す指標で、製品やサービスの提供にかかる直接費用を差し引いた後の利益を表します。営業利益との違いは、販売費及び一般管理費(販管費)を含まない点です。そのため、営業活動の効率性を直接反映せず、純粋な製品やサービスの収益性を示します。売上総利益は、価格設定や原価管理の適切性を評価する際に重要な指標となります。また、業種間の比較にも適しています。
経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益です。
計算式:経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用
営業利益が本業の収益力を示すのに対し、経常利益は企業の通常の活動全体から生じる利益を表します。営業外収益には受取利息や配当金、営業外費用には支払利息などが含まれます。経常利益は、財務活動を含む企業の総合的な収益力を反映するため、企業の安定性や持続可能性を評価する際に重要視されます。ただし、特別損益は含まれないため、一時的な要因による影響は少ない指標となっています。
税引前当期純利益
税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いた利益です。
計算式:税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 – 特別損失
この利益は、法人税等を差し引く前の、その期の企業活動全体による最終的な利益を示します。特別利益には固定資産売却益など、特別損失には災害による損失などが含まれます。営業利益との主な違いは、本業以外の要因や一時的な要因も含む点です。税引前当期純利益は、企業の全ての活動結果を反映するため、経営者の意思決定や企業評価において重要な指標となります。ただし、一時的な要因の影響を受けやすいため、解釈には注意が必要です。
当期純利益
当期純利益は、税引前当期純利益から法人税等を差し引いた、最終的な利益です。
計算式:当期純利益 = 税引前当期純利益 – 法人税等
これは企業が1年間で獲得した最終的な利益を示し、株主に帰属する利益とも言えます。営業利益との主な違いは、本業以外の全ての要因と税金の影響を含む点です。当期純利益は、配当の原資となるため、投資家にとって重要な指標です。また、企業の最終的な収益力を示すため、企業価値評価にも用いられます。ただし、税制の影響を受けるため、国際比較や経年比較の際には注意が必要です。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは、企業の本業による現金の増減を示します。
計算式:営業キャッシュフロー = 当期純利益 + 非現金支出費用(減価償却費等) ± 運転資本の増減
これは実際の現金の動きを反映するため、営業利益とは大きく異なります。営業利益が発生主義に基づくのに対し、営業キャッシュフローは現金主義に基づきます。例えば、売上債権の増加は営業利益には影響しませんが、営業キャッシュフローは減少します。この指標は、企業の資金繰りや支払能力を評価する上で重要です。また、会計方針の違いによる影響を受けにくいため、企業間比較にも適しています。
EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)
EBITDAは、Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略で、利払い前、税引き前、償却前の利益を指します。読み方は「イービットディーエー」「エビーダ」「イービットダー」「イービッダー」など様々あり、特に決まった読み方はありません。
計算式:EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + のれん償却額
営業利益との主な違いは、減価償却費やのれん償却額を加算する点です。これにより、企業の本業による収益力をより純粋に表現し、設備投資規模や償却方法の違いによる影響を排除します。EBITDAは、企業の実質的な収益力や、キャッシュ創出能力を評価する際に用いられます。特に、多額の設備投資を行う業界や、M&Aを積極的に行う企業の比較に適しています。
フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは、企業が自由に使える現金の量を示します。
計算式:フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー – 設備投資
営業利益との主な違いは、実際の現金の動きを反映し、かつ将来の成長に必要な投資を差し引いている点です。この指標は、企業が債務の返済や配当の支払い、自社株買いなどに使用できる資金の量を示すため、財務の健全性や株主還元の余力を評価する上で重要です。また、企業価値評価においても重要な指標とされ、特に DCF法(割引キャッシュフロー法)による企業価値算定の基礎となります。
まとめ
営業利益は、会社がどれだけ儲かっているかを示す大切な数字です。この数字を見れば、経営者は自社の強みや弱みがわかり、投資家は会社の価値を判断できます。
営業利益は他の財務指標を計算する基礎にもなるので、会社の価値を評価したり、今後の戦略を考えたりする時に欠かせません。
ただし、営業利益だけでなく、他の利益やお金の流れを示す指標も一緒に見ることが大切です。そうすることで、会社の全体像がよりはっきりと見えてきます。
経営者や投資家は、営業利益を中心に会社の財務状況をよく理解することで、より良い判断ができ、会社の成長へと繋がります。
関連記事がありません
国内外のEnablementの最新動向や事例、
特別イベントのご案内等、お役立ち情報を定期的にお届けします
機能やサービス内容などが
3分でわかる
ご相談・ご不明な点は
お気軽にお知らせください
Enablement Appの実際の
画面を体感できます
導入事例や、Sales Enablementが解決する課題などをまとめた資料一覧もぜひご覧ください。