【営業 戦略ガイド】営業戦略の立て方と進め方を徹底解説

Enablement Writer 清水 麻友

営業戦略は、企業が中長期的なビジネス目標を達成するための道筋を示す重要な計画です。具体的な目標設定から、それを達成するためのアプローチを明確にすることで、組織全体の活動を一つの方向に導きます。

本記事では、営業戦略の基本的な定義から、その立て方、さらに代表的なフレームワークの活用方法について詳しく解説します。また、実際の成功事例を交えながら、営業戦略を効果的に実行するためのポイントも紹介します。

営業戦略の基本と重要性

営業戦略は、企業が中長期的なビジネス目標を達成するための重要な指針です。効果的な営業戦略を持つことで、組織全体が同じ目標に向かって一貫性を持って進むことができ、リソースの最適配分や市場機会の最大化が可能になります。

営業戦略とは何か?

営業戦略とは、「企業が定めたビジネス目標を達成するための具体的な計画や方針」です。ターゲットとなる市場や顧客層の選定、競合分析、製品やサービスの価値提案の策定、リソースの配分、そして売上目標に至るまでの道筋が含まれます。営業戦略は、単なる目標設定ではなく、それをどのように実現するかという方法論を明確にするものであり、企業の成長と成功に直結する重要な要素です。

営業戦略と営業戦術の違い

営業戦略と営業戦術は、どちらも営業活動において重要な役割を果たしますが、その性質や目的には違いがあります。

・営業戦略:中長期的な目標を達成するための包括的な計画であり、企業全体の方向性を決める

・営業戦術:戦略を実行に移すための具体的な手法やアクションプラン

例えば、営業戦略が「新市場でのシェア拡大」を目指すならば、営業戦術は「新規顧客への直接訪問を強化する」や「ターゲット層に合わせたプロモーションを展開する」といった具体的な行動に焦点を当てます。営業戦略は全体の枠組みを決め、営業戦術はその枠組みの中で成果を上げるための手段、と考えるとよいでしょう。

営業戦略の立てるための4つのステップ

営業戦略を立てるためには、段階的なアプローチが必要です。以下の5つのステップに従って進めることで、精度を高めることができます。

STEP1: 目標を定義する

営業戦略を立てる第一歩は、目標を定義することです。企業の全体的なビジネス目標(経営戦略)と一致する形で、営業部隊が達成すべき具体的な目標を設定します。例えば、「3年以内に市場シェアを5%拡大する」や「新規事業の売上比率を20%に引き上げる」「既存顧客からの売上を120%にする」など、企業の成長に直結する内容であるべきです。目標が明確で具体的であるほど、その後の戦略立案や施策実行がスムーズに進みます。

STEP2: ターゲット市場の選定

次に、自社の強みを最大限に活かせるターゲット市場を選定します。これには、市場の成長性、競合状況、自社の競争優位性などを総合的に評価します。必要に応じて市場セグメンテーションを行い、最も高い成果が期待できる市場セグメントを特定します。ここでは、長期的な視点で市場の魅力度を判断することが重要です。

STEP3: 差別化戦略の策定

選定したターゲット市場において、どのように競合他社と差別化を図るかを明確にします。これには、製品・サービスの独自性、価格戦略、ブランド戦略などが含まれます。顧客に提供する価値を明確に定義し、それを効果的に伝えるための戦略を立案します。例えば、「高品質・高価格戦略」や「ニッチ市場特化戦略」などが考えられます。

STEP4: リソース配分計画

戦略を実行するためのリソース配分計画を立てます。これには、人材、予算、時間などの資源が含まれます。限られたリソースを最適に配分し、最大の効果を得られるよう計画します。例えば、どの市場に重点を置くか、どの既存顧客との関係強化に注力するか、そこにかけられる人員を含めた予算を決定します。また、必要に応じて組織構造の見直しや新たな能力の獲得(M&Aや人材採用など)も検討します。

STEP5: KPIを設定し施策を実行する

最後に、営業戦略を実行に移すための具体的なKPIを設定します。戦略の進捗状況を定量的に評価し、必要に応じて施策を修正できます。KPIは売上高、成約率、新規顧客数など、営業活動の成果を測定する指標として設定されるべきです。KPIに基づいて、戦略を具体的な施策に落とし込み、組織全体で実行に移します。

営業戦略に使えるフレームワーク

さまざまなフレームワークを活用することで、より精度の高い戦略を立案することができます。

以下では、営業戦略でよく使用される6つの代表的なフレームワークについて解説します。

SWOT分析

SWOT分析は、企業の内部および外部環境を分析するための基本的なフレームワークです。SWOTは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を取ったもので、自社の強みと弱みを理解し、外部環境からの機会と脅威を特定することを目的としています。

企業が持つ競争優位性をどのように活かすか、または弱みや脅威に対処するための戦略を明確にすることができます。

3C分析

3C分析は、Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの要素に焦点を当てた分析手法です。ターゲット顧客のニーズを理解し、自社の強みを活かして競合と差別化を図る戦略を構築することが可能です。3C分析は、顧客の視点から競争環境を評価し、最適な戦略を策定するために役立ちます。

4P分析

4P分析は、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つの要素からマーケティング戦略を構築するフレームワークです。営業戦略においても、この4Pの視点を取り入れることで、製品やサービスの提供方法、価格設定、流通チャネル、そしてプロモーション活動を最適化することができます。

PEST分析

PEST分析は、Political(政治)、Economic(経済)、Social(社会)、Technological(技術)の4つの外部要因を分析するフレームワークです。これらのマクロ環境要因がどのように影響するかを理解することで、より柔軟かつ適応性のある戦略を構築できます。PEST分析は、市場の動向を把握し、外部環境に適した戦略を策定する際に有効です。

5フォース分析

5フォース分析は、業界内の競争環境を評価するためのフレームワークです。新規参入者の脅威、代替品の脅威、供給者の交渉力、買い手の交渉力、そして業界内の競争状況の5つの力を評価します。営業戦略を立てる際に、この5つの力がどのように自社の競争力に影響を与えるかを理解することで、より効果的な競争戦略を構築できます。

STP分析

STP分析は、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲットの選定)、Positioning(ポジショニング)の3つのステップからなるフレームワークです。営業戦略において、STP分析を活用することで、ターゲットとする市場セグメントを明確にし、その市場での自社の立ち位置を確立できます。特に、特定の市場ニーズに応えるための差別化戦略を考える際に、STP分析は効果的です。

営業戦略を成功させるポイント

KPIの進捗管理と分析による継続的な改善

営業戦略を成功させるには、KPIの進捗を定期的に確認し、分析することが重要です。例えば、毎月の売上高、成約率、新規顧客の獲得数といった具体的なKPIを設定し、これらの数値が目標に対してどの程度進捗しているかをチェックします。また、それぞれのKPIを改善する為にKPIを分解し、ビジネスドライバーの特定をしておくことが重要です。営業プロセス、プロセスの中で抑えるべきKey Action、Key Actionを実行する為に必要な知識やスキルまで分解しておくと、どんな施策をすればどれくらいKPI改善に結びつくかをロジカルに考えていくことが可能になります。さらに、これらのデータを定点チェックすることで、どの施策が効果的であるか、どの部分に改善の余地があるかを明確にします。

実践方法:

・KPIを構造的に設定する。
・KPIをプロセス、Key Action、知識やスキルに分解しいわゆる「営業スキルマップ」を作成する。
・データ分析ツールを活用して、KPIの進捗をリアルタイムで可視化する。
・目標未達のKPIについて、原因分析を行い、スキルマップに基づき改善策を設定する。

デジタルツールの駆使と戦略に基づいた営業活動の強化

現代の営業活動では、デジタルツールの活用が必須です。例えば、CRM / SFAを導入することで、顧客情報を一元管理し、リードの進捗状況を追跡できます。営業担当者は、どの顧客がどの段階にあるかを正確に把握し、適切なタイミングでフォローアップを行うことができます。

実践方法:

・CRM / SFAを導入し、顧客情報を一元管理する。
・マーケティングオートメーションツールを使用して、リードナーチャリング(潜在顧客の育成)を自動化する。
・データに基づいた営業活動を実施し、顧客の購買行動に合わせたタイミングでアプローチする。

チームのトレーニングと個々メンバーのスキル向上

営業チームのスキル向上は、戦略を成功させるための基盤です。特に、業界の知識、製品の理解、営業トークの技術は、定期的に更新し、トレーニングを通じて強化する必要があります。チーム全体でのロールプレイや、ベストプラクティスの共有を行うことで、個々のメンバーが持つノウハウを最大限に活かせます。

実践方法:

・営業スキルマップに即したクリティカルなスキル・知識を身に付ける為のトレーニングプログラムを設け、全員が参加できるようにする。
・ロールプレイを活用し、一定のレベルに達しているかスキルマップを元にチェックをする。
・未達のKPIに紐づく知識を身に付ける為のベストプラクティスをチームで共有し、知識を底上げする。

効果の可視化と報告

成果を可視化し、関係者に報告することも業務の一部です。戦略がどの程度成功しているかを客観的に評価し、必要に応じた改善を迅速に行います。

KPIとKGIの設定方法

進捗状況を測る指標のKPIは、通常は短期的な目標に対して設定されます。これに対し、KGIは、最終的なビジネス目標(ゴール)を達成するための指標であり、より長期的な視点で設定されます。両者を組み合わせることで、戦略の成功を効果的にモニタリングできます。

設定方法の具体例:

・KPI: 月間売上高、成約率、新規リード数、契約継続率、顧客満足度スコアなど
※日常的な営業活動の成果を測定するために設定されます。

・KGI: 年間売上目標、市場シェアの拡大、特定セグメントでの市場参入、顧客生涯価値(CLV)の向上など
※企業の中長期的なビジネスゴールに直結する指標です。

具体的な手順:

・KGIを設定: 企業全体の長期的な目標(例: 年間売上1億円の達成)を設定します。
・KPIを設定: その目標に向かうための具体的な短期的指標(例: 月間売上800万円の達成、成約率20%)を設定します。
・モニタリング: 定期的にKPIをレビューし、KGIに向かっているかを確認します。

上司や経営陣への効果的な報告方法

上司や経営陣に対して効果的に成果を報告するためには、データの可視化とプレゼンテーションの工夫が必要です。

要点を簡潔にまとめる: 

経営陣が最も関心を持つKPIやKGIにフォーカスし、詳細なデータは補足資料として提供します。例えば、「今月の売上高は目標の110%に達しました。主な要因は新規顧客の増加によるもので、成約率が通常より15%上昇しました」といった形で報告します。

データの可視化: 

グラフやダッシュボードを活用し、データを視覚的に分かりやすく伝えます。例えば、売上の推移や成約率の変化を折れ線グラフや棒グラフで示し、視覚的に成果を強調します。

アクションプランと今後の展望: 

達成した成果に基づき、次にどのようなアクションを取るべきか、今後の計画を提案します。例えば、「今後の目標達成に向けて、次の四半期では新規市場への進出を強化します。そのために、追加のリソース投入を検討しています」といった具体的な次のステップを示します。

成功事例を紹介: 

成果を裏付ける具体的な事例を紹介することで、報告の信頼性を高めます。例えば、「先月のキャンペーンが成功し、過去最高の成約率を達成しました。特に中小企業向けのプロモーションが効果的でした」といった形で、成功要因を具体的に伝えます。

まとめ

営業戦略は企業の成長に重要な計画です。効果的な戦略には、明確な目標設定、綿密な市場分析、顧客理解が不可欠です。SWOT分析などのツールを活用し、自社の強みと市場機会を見極め、営業活動の戦略を立てましょう。

戦略の成功には、定期的なKPIの確認と改善、デジタルツールの活用、そして営業チームの継続的なスキルの向上が欠かせません。短期的なKPIと長期的なKGIを設定し、進捗を確認しましょう。

リーダーや経営陣との情報共有、全社一丸となって戦略を実行することが大切です。適切な営業戦略の進め方と実行は、成功への近道となります。今日から、自社の営業戦略を見直し、実践に移してみてはいかがでしょうか。

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