トップセールスとして結果を残してきたのに、営業マネージャーに昇進してからは思うような成果が出せず、『部下の指導方法がわからない』 『チーム全体の業績が伸び悩む』 『自分一人で営業した方が成果が出せるのに…』このように感じておられる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、同じ立場を経験し、チームを成功へと導いてきた営業マネージャーの実践手法をご紹介しながら、明日からのマネジメントに即実践できる具体的な解決策をお届けします。
営業マネージャーの役割とは
営業マネージャーの役割は、組織の売上目標達成と営業チームの育成・管理という二つの重要な側面を持っています。具体的には、営業戦略の立案と実行、売上予測の分析、市場動向の把握、そして営業活動の最適化を行います。
また、チームメンバーの採用から教育、評価、モチベーション管理まで、人材育成の面でも大きな責任を担っています。個々の営業担当者の強みを活かしながら、チーム全体のパフォーマンスを向上させることが求められます。
さらに、上層部への報告や他部門との連携、重要顧客との関係構築など、社内外のコミュニケーションハブとしての機能も果たします。データに基づく意思決定と、現場の状況を踏まえた柔軟な対応力を併せ持つことが、成功する営業マネージャーの条件と言えるでしょう。
担当者からマネージャーへの改革意識
マネージャーへのキャリアアップは、トップセールスにとって大きな転換点です。個人の成果を追求してきた立場から、チーム全体の成果を最大化する役割への転換が求められるためです。
最も重要なのは、プレイヤーとしての成功体験に固執せず、「チームの成果が自分の成果である」という視点に切り替えることです。自身の商談時間を抑え、多くの時間をチームマネジメントと戦略立案に充てることが望ましいでしょう。多くの営業マネージャーは「自分が動けば結果が出る」という思考に陥りがちですが、それではチームの潜在力を最大限に引き出すことはできません。メンバー一人一人の成長をサポートし、チーム全体で持続的に成果を生み出す仕組みづくりこそが、優れたマネージャーへの第一歩となります。
チームの成果を最大化するために
チームの成果を最大化するためには、戦略立案、目標設定、そしてコミュニケーションの3つの要素を意識的にマネジメントすることが重要です。まず、市場環境や競合状況を踏まえた明確な戦略を策定し、その中でメンバーの強みを活かした最適なリソース配分を決定します。次に、この戦略に基づいてチーム目標を個人レベルまで具体的にブレイクダウンし、達成への道筋を示します。そして、定期的な1on1ミーティングやチーム会議を通じて、戦略の進捗を確認しながら建設的な対話を促進し、情報共有の仕組みを確立することで、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。これら3つの要素を連動させることで、持続的な成果創出が可能となります。
トップセールスとしての経験を活かすポイント
トップセールスとして培ってきたビジネス経験は、マネージャーとしての強みとなります。ただし、その活かし方は「自分が実践して見せる」というスタイルから、「メンバーに考えさせ、気づきを促す」という方向へと転換が必要です。例えば商談同行では、事前に着目すべきポイントを伝え、商談中はメンバーを主役に立ち回り、事後には適切な質問を投げかけることで学びを深めます。また、自身の成功体験だけでなく、再現性のある成功プロセスを、データやヒアリングを元に作成し、共有することで、チーム全体のスキル向上につなげます。
さらに、業界動向や競合分析、顧客インサイトといった市場理解を体系的に整理し、定期的に共有することで、チーム全体の営業力強化を図ることができます。
このように、豊富な経験を持つマネージャーだからこそ、「教える」のではなく「引き出す」コミュニケーションを心がけることがとても重要です。
営業マネージャーがまず最初に行うべきことは、「このチームをどのような組織にしたいのか」というビジョンを描くことです。これは会社の方針に沿いながら、チーム独自の強みを活かした目標として具体化していきます。このように明確なビジョンがあることで、メンバー一人一人が自分の役割を理解し、主体的に行動できるようになります。同時に、チーム全体が一つの方向に向かって成長する推進力となり、このビジョンを実現するために、現状分析から始め、具体的な行動計画を立案し、その上で、実行状況を把握・管理する仕組みを作り、定期的な振り返りで改善を重ねていきます。
それでは具体的な基本行動とその実践方法を見ていきましょう。
現状の把握と対策(仕組みづくり)
マネジメントの第一歩は、チームの現状を正確に把握し、適切な対策を講じる仕組みづくりです。着手すべきポイントは3つの観点からの現状分析です。1つ目は売上・案件数・商談進捗率などの定量的な実績データを分析する実績面、2つ目は各メンバーの営業プロセスの特徴や課題を理解するプロセス面、そして3つ目はメンバー個々の強み・弱みをスキルレベルなどの定量も含めて把握する育成面です。
この分析結果を基に、全メンバーの商談状況を一目で把握できる案件管理表を標準化し、重点施策の実施状況を可視化する週次の進捗確認シート、さらにメンバーごとのスキル・知識レベルを計測する為のスキルマップを構築します。これらの仕組みは、単なる管理ツールではなく、メンバーの成長を支援し、チーム全体の営業力を向上させるための基盤となります。定期的な振り返りと改善のサイクルを組み込むことで、持続的な成果創出につながるマネジメントの土台を作ることができるでしょう。
実行できているかをどのように管理するか
チームの活動をしっかりと見守り、支援していくために、3つの時間軸で管理を行います。まず日々の管理では、朝会やチャットを活用し、SFAに登録された商談記録や行動予定を確認、メンバーの活動状況や重要案件の進み具合をタイムリーに把握します。週に1度の全体会議では、SFAのデータを見ながら、案件の進捗を皆で確認。特に成功事例を共有し、チーム全体のレベルアップにつなげます。月1回は、じっくりと振り返りの時間を設けます。SFAから見える数字の確認はもちろん、1on1面談でメンバー一人一人の成長についても話し合います。これらの管理は決して監視ではなく、メンバーの成長を支援する機会として活用できます。SFA入力の質も大切にしながら、チーム全体の成長を促します。
実行レベルを上げるための施策を考える
実行レベルを上げるためには、個々のメンバーの能力や意欲を最大限に引き出す仕組みづくりが必要です。具体的には、以下の3つの施策を重点的に実施することが効果的です。
まず、「成功事例の見える化とプロセスの標準化」を行います。チーム内で出た好事例を分析し、再現可能な形でナレッジ化。これにより、メンバー全員が高いレベルで実践できる基準を作ります。
次に、「段階的なスキルアップ計画の策定」です。SFAのデータや1on1での対話を通じて把握した各メンバーの課題に対して、具体的な行動目標と達成期限を設定します。小さな成功体験を積み重ねることで、自信とモチベーションを高めていきます。
最後に、「チーム内での相互支援体制の構築」です。週次の商談レビューを単なる報告の場ではなく、メンバー同士が知恵を出し合い、より良い提案を生み出す場として活用して、ベテランと若手がペアを組んで案件に取り組むなど、実践的な学びの機会を創出します。
これらの施策を一貫して実行することで、メンバー一人一人の実践力が着実に向上し、それがチーム全体の底上げにつながります。次項では、これらの施策を実現するための具体的な営業管理のポイントについて解説していきます。
行動を振り返って必要に応じて修正する
マネジメントサイクルの重要な要素として、定期的な振り返りと改善があります。月次のKPI達成状況、週次の重点施策の進捗、日々の営業活動データを分析し、その結果を確認します。この時、単なる数値確認に終わらせず、「なぜその結果になったのか」「どこに課題があるのか」をチーム全体で話し合うことが大切です。
振り返りの結果、施策が効果を上げている場合は継続・強化します。一方、期待した効果が出ていない場合は、原因を探り改善策を考えます。ただし、安易に方針変更をすると混乱を招く恐れがあるので、最低3ヶ月は継続して効果を見ることをお勧めします。このPDCAサイクルを着実に実施することで、チームの実行力は着実に高まっていきます。
これまで解説してきた営業マネージャーの基本行動を踏まえ、本章では実践的な営業管理の具体的手法をお伝えします。ここで紹介する4つのポイントは、多くの成功している営業マネージャーが実践している方法です。それぞれのポイントには、すぐに活用できる具体的なツールや進め方のヒントが含まれています。
週次商談レビューで成果を実現する仕組みづくり
商談レビューは単なる状況報告の場ではなく、チーム全体で知恵を出し合い、案件の成約確率を高める場として活用することが重要です。効果的な商談レビューの実施ポイントは以下の3つです。
まず、事前準備として、メンバーにはSFAへの案件情報の入力を徹底してもらいます。特に「顧客の現状と課題」「競合状況」「決定権者の意向」といった重要項目については、具体的な記載を求めます。
レビュー時には、時間を区切って(1案件15分程度)、①現状の説明(3分)、②課題の明確化(5分)、③具体的なアクションの決定(7分)というような流れで進行します。この際、マネージャーは指示を出すのではなく、メンバーからの質問や意見を引き出す質問を投げかけることが大切です。
最後に、決定した施策の実行状況を翌週の冒頭で確認し、PDCAを回します。このサイクルを確立することで、チーム全体の提案力と成約率の向上につながります。
1on1面談で個人の成長を支援する方法
個人の成長なくしてチームの成長はありません。1on1面談は、メンバーの成長を支援する重要な機会です。効果的な1on1の実施方法は以下の3ステップです。
最初に、月次の成績データやSFAの活動記録、スキルデータをもとに、メンバーの強みと課題を客観的に分析します。ただし、これはあくまで会話の材料であり、メンバー自身の認識を聞き出すことが重要です。
面談では、「最近、うまくいったことは?」「どんな点で困っている?」といったオープンな質問から始め、メンバーの本音を引き出します。その上で、具体的な成長目標と行動計画を、メンバーと一緒に考えていきます。
面談後は、合意した行動計画の進捗を日々の活動の中でフォローし、適切なタイミングでフィードバックを行います。この継続的な関わりが、メンバーの成長へとつながります。
チーム全体のプロジェクトを効率的に管理する手順
プロジェクト管理では、プロジェクト管理表による進捗の可視化を行います。全案件の担当者、期限、現状の課題を一覧で把握し、重要度と緊急度から優先順位を付けます。その中から特に注力すべきプロジェクトを3つ程度選定し、チーム全体で集中的に取り組みます。
週次のミーティングでは、重点案件の進捗を確認し、メンバー間の協力が必要な部分を明確にします。日々の活動ではチャットやSFAを活用して情報を共有し、問題が発生した際は早期に対応できる体制を整えます。このように、全員が同じ目標に向かって効率的に動ける仕組みを作ることで、プロジェクト全体の成功確率を高めることができます。
精度の高い売上予測と達成に向けた取り組み
売上予測の精度を高め、確実に目標を達成するには、データに基づいた管理が重要です。過去の成約パターンを分析し、商談段階ごとの成約確率を設定することで、より現実的な数字の把握が可能になります。例えば商談初期は30%、契約書提示後は80%というように、段階別の確率を明確にします。
大型案件については、マネージャー自身が同行営業で状況を確認し、決定権者の意向や競合状況をしっかりと分析します。また、月初の予測と実績の差異を継続的に検証することで、より確度の高い売上計画とその達成が可能になります。チーム全体でこの取り組みを続けることで、予測精度は着実に向上していきます。
成績が低迷したメンバーへの対応
メンバーの成績低迷は、パイプライン数値の変化が見え始めた時点での対応が鍵となります。本人との1on1を増やし、業務上の課題だけでなく、モチベーションや仕事の悩みなども含めて、率直な対話を心がけます。
マネージャー自身が同行営業で現場に入り、お客様との商談の様子や提案内容を確認します。その上で、かつての成功パターンと現在の違いを具体的に示し、改善すべきポイントを明確にします。目標は月単位の小さな目標に分解し、達成感を積み重ねていきます。また、チーム内で状況に応じたサポート体制を組み、日々の相談や情報共有がしやすい環境をつくります。このような地道なフォローを続けることで、必ず成績は回復に向かいます。
大型案件失注後のチーム立て直し
大型案件の失注は、一時的にチームの雰囲気が落ち込むのは避けられません。しかし、この経験を次の成功につなげるため、まずは営業部長を含めたミーティングの場を設け、案件の振り返りを行います。
失注の要因として、提案内容や価格面での競争力、お客様の本質的なニーズの把握、キーマンとの関係構築など、具体的な観点から課題を整理します。その上で現在進行中の案件、特に大型案件について、同じ課題を抱えていないか総点検します。さらに、これまでの成功事例から得られたノウハウを改めて見直し、チーム全体の営業力強化につなげます。こうした前向きな取り組みを通じて、チームは必ず立ち直ることができます。
ベテラン社員との関係づくり
ベテラン社員との関係構築では、まず相手の経験とこれまでの功績を正しく理解し、敬意を持って接することが基本です。マネジメントの方針を一方的に押し付けるのではなく、「今のチームをより良くするために」という共通の目標に向けて、率直な意見交換を心がけます。
特に新しい施策を導入する際は、事前にベテラン社員の意見を聞き、その知見を活かすことで、より実践的な取り組みが可能になります。また、若手への指導や重要案件のサポートなど、その経験を活かせる役割を明確にすることで、チーム全体の成長にも貢献してもらえます。日々の営業活動でも、細かな指示出しは避け、裁量を持って動ける環境を整えることで、互いの信頼関係が深まっていきます。
新人育成と目標達成の両立
新人育成と目標達成の両立は、短期的には相反するように見えますが、計画的な育成プログラムがあれば十分に実現可能です。まずは3ヶ月単位で具体的な成長目標を設定し、商品知識や提案スキルなど、段階的な習得計画を立てます。
育成面では、できるだけ多くの商談や架電などの実際の営業活動の振り返りの時間を確保しつつ、ベテラン社員とのペア活動も取り入れます。一方で、新人でも比較的取り組みやすい既存顧客のフォローや小規模案件を任せることで、早期の売上貢献も図ります。新人の成長度合いに応じて徐々に任せる範囲を広げていき、半年から1年で一人前の戦力となることを目指します。焦らず育てることが、結果的には最短での目標達成につながります。
営業マネージャーとしての成長には、自身の成長、メンバーの成長、そしてチーム全体の成長という3つの要素が不可欠です。本章では、それぞれの観点から具体的な成長促進方法をご紹介します。
マネージャーとしての成長ステージ
営業マネージャーとしての成長は、大きく3つのステージに分けられます。第1ステージは「基盤構築期」です。この段階では、営業プロセスの標準化やKPIの設定など、チームマネジメントの基礎を固めることに注力します。日次・週次・月次の管理サイクルを確立し、メンバーとの1on1を通じて信頼関係を築いていきます。
第2ステージは「チーム強化期」です。ここでは、個々のメンバーの強みを活かしたチーム編成や、効果的な案件アサイン、ナレッジ共有の仕組みづくりなど、より高度なマネジメントスキルが求められます。メンバー同士の相互支援を促進し、チーム全体の営業力向上を図ります。
第3ステージは「戦略的成長期」です。市場環境や競合分析に基づく中長期的な戦略立案、新規市場開拓のためのチーム組成、次世代リーダーの育成など、より広い視野でのマネジメントが必要となります。各ステージでの経験と学びを積み重ねることで、より高度な営業組織のマネジメントが可能となります。
メンバーの可能性を引き出す評価法
メンバーの評価は、単なる数値目標の達成度だけでなく、成長プロセスを重視した多面的な評価が効果的です。具体的には、以下の3つの観点から評価を行います。
まず「定量評価」では、売上目標や案件創出数などの数値実績に加え、商談進捗率や提案実施回数といったプロセス指標も含めます。これにより、結果だけでなく、そこに至るまでの努力も適切に評価できます。
次に「定性評価」では、お客様満足度、チームへの貢献度、新しい取り組みへの挑戦姿勢などを評価します。特に、他のメンバーとの知識共有や協力体制づくりなど、チーム全体の成長につながる行動を積極的に評価することが重要です。
さらに「成長評価」として、四半期ごとに設定した個人の成長目標に対する達成度を確認します。この際、目標設定から評価まで、メンバー自身が主体的に関わることで、より効果的な成長支援が可能となります。
チーム全体の営業力を高める
チーム全体の営業力を向上させるには、個々のスキルアップに加えてチームとしての総合力を高める取り組みが必要です。そのために、まず成功事例や失敗事例を体系的に整理し、業界別の提案アプローチや価値訴求方法など、実践的なノウハウを蓄積・共有するナレッジマネジメントを確立します。また、案件特性に応じて異なる強みを持つメンバーでチームを組み、より高度な提案を実現する協力体制を構築します。定期的な勉強会も実施しますし、さらに、チャレンジを称賛し、失敗から学ぶ姿勢を大切にする文化を作り、メンバーが安心して新しい取り組みにチャレンジできる環境を整えます。これらの取り組みを継続的に実践することで、チーム全体の営業力向上と持続的な成果創出が可能となります。
トップセールスからマネージャーへの転換は、個人プレイヤーからチーム全体の成果を追求する立場へのとても大きく役割が変わるタイミングです。この変化を成功に導くためには、まず週次商談レビューや1on1面談といった基本的なマネジメントの仕組みを確立することから始めましょう。その上で、メンバー一人一人の成長をサポートしながら、チーム全体のナレッジ共有や協力体制を整えていきます。
マネージャー自身も成長のステージを意識しながら、自己の経験を活かしつつ、「教える」のではなく「引き出す」マネジメントを心がけることで、持続的な成果を生み出すチームへと成長していくことができます。すぐにできることから一つずつ実践を重ね、理想のチームづくりを進めていきましょう。
国内外のEnablementの最新動向や事例、
特別イベントのご案内等、お役立ち情報を定期的にお届けします
機能やサービス内容などが
3分でわかる
ご相談・ご不明な点は
お気軽にお知らせください
Enablement Appの実際の
画面を体感できます
導入事例や、Sales Enablementが解決する課題などをまとめた資料一覧もぜひご覧ください。