デジタル化が進む現代では、営業データの活用が成果を上げる鍵となっています。見込み客の優先順位付けや営業プロセスの最適化、顧客ニーズに基づいた戦略の立案など、データの活用次第で営業成績は大きく変わります。しかし、データを適切に活用するには、正しい方法論と注意点を理解することが不可欠です。
この記事では、データ活用の基礎から、データ収集のやり方、データを分析してインサイトを得る方法、インサイトの活用方法、成功事例に至るまで、現場で役立つ実践的なポイントを網羅しつつ、営業データを活用して成果を最大化する方法を詳しく解説します。
「同じ方法を繰り返して違う結果が出ると考えるのは狂気だ」
アインシュタイン(諸説あり)
何かの発明でも、ビジネスでも、同じ事をやっていたら当然同じ事の繰り返しにしかなりません。
営業データとは、「何をやったら」「どうなった」というデータの集合体であり、振り返り→次の一手に活用できます。逆に営業データが無ければ、同じことをやっているのか違うことをやっているのか、その結果がどうだったのかが分からず、次の一手は「勘」に任せるしかありません。
近年、デジタル化の進展とともに競争環境が激化し、より効率的で効果的な営業活動が求められています。従来の勘と経験だけに頼る営業では、急速に変化する市場環境や多様化する顧客ニーズに対応することが困難になってきています。
営業データを活用する主な目的は大きく以下の4つが挙げられます。
このように、営業データを活用することで、様々な事業活動を改善していくことが可能になります。
前述の通り、営業データの基本構造は「何をやったら」「どうなった」ですが、より効果的なデータ活用には、「何をやったら」をもう少し分解していく必要があります。
オススメは「誰に」「誰が」「何をしたら」の3つに分け、この3つに「どうなった」という情報を加えた以下4つの要素を正確に把握することが重要です。
「誰に」
・顧客のハード情報(規模、業種、部署、役職など)
・顧客のソフト情報(ミッション、ビジョン、考え方、追っているKPI、現在の取り組みなど)
「誰が」
・営業担当者のハード情報(部署、役職、経験年数など)
・営業担当者のソフト情報(持っているスキルや知識、特性など)
「何をしたら」
・営業活動のハード情報(活動種別:架電 or メール or MTG、活動数、タイミングなど)
・営業活動のソフト情報(架電やメールの中での営業担当の言動など)
「どうなった」
・商談や架電のハード情報(フェーズ、遷移率(アポ率、受注率等)、金額、満足度、LTVなど)
・商談や架電のソフト情報(顧客の言動:アポをくれた、ミッションを教えてくれた、担当者の合意が取れた、稟議に上げてくれたなど)
これらの要素を分析することで、成果を向上させるための具体的な改善点を特定することができます。
2024年、営業データの収集方法は、生成AIの台頭により大きく進化し、豊富なデータをほぼ自動で収集できるようになってきました。例えば、商談や架電の録画・録音データをAIが読み解き、営業担当や顧客の言動データを構造化し、SFAに入力する情報の下書きを自動で作成しておくなどが可能になっています。
これにより「営業データをいかに収集するか」の戦いが終わり、「収集した営業データをいかに活用するか」の戦いに戦場が移ってきています。
以下に営業データ収集方法の歴史を簡単にまとめましたのでご参考までに。
2000年より以前
手書きによる営業報告が主流で、「データ」と呼ばれることもなく、「メモ」「情報」として各営業が仕事をしている報告の為に記載することが主な目的でした。故に、内容のばらつきが大きく、データとしての活用は考えもつかないほど困難で、かろうじてその顧客への次の一手を考える上で読み返す営業が存在したくらいです。また、記録自体を怠る担当者も多く、「データ活用」という概念が営業に持ち込まれることはほぼほぼ無い時代でした。
2000年初頭〜2023年
営業部にもPCが普及し始め、Excel等での顧客情報管理が始まりました。2020年代には、SFA/CRMを使うのがより一般的になり、データの共有・活用が理論上容易になってきました。しかし、実際は入力項目の多さや使いづらさから、入力率が低く、そもそもの「データが収集できない」ことが問題となっていました。(一部の企業がなんとか乗り越え始めていました)
2024年以降
生成AIの活用により、データ入力の自動化が進んでいます。これにより、より正確で豊富なデータを効率的に収集することが可能になっています。特に今までなかなか収集できなかったソフト情報が収集できるようになりました。(例:商談や架電の録画・録音データをAIが読み解き、営業担当や顧客の言動データを構造化し、SFAに入力する情報の下書きを自動で作成しておくなど)
効果的なデータ分析には、以下のステップが重要です。
営業データは、以下のような形で活用することができます。
※上から順に見直しやすく、効果が出やすい順にしています。(新規事業の場合は一番下をやった上で、上から順に見直していく)
■ターゲットの見直し:最も確率の高い顧客層への注力
改善したい状況 | LTVや成約率が低く、事業計画と乖離している。 |
打ち手の候補 | ターゲットの見直し(「誰に」の改善) |
具体イメージ | 業界ごとや、顧客規模ごと、地域ごとなど自社商材の用途に影響しそうな顧客のハード情報と成果(LTVを上げたいならLTV)を分析にかけ、最も適したセグメントを割り出す。 |
備考 | ターゲット=業界 としがちだが、商材ごとにセグメントを切るべき軸は変わってくるので要注意。例えば業務改善のサービスを提供している企業の場合、業界は違っても同じ業務プロセスをしている企業もあれば、業界は同じでも全く違う業務プロセスの会社もあり、業界で区切っても良い示唆は得られないこともある。 |
■プロセスの改善:商談プロセスの見直しやフェーズ定義の見直し
改善したい状況 | 遷移率の中でも案件化率が低く、事業計画と乖離している。 |
打ち手の候補 | プロセスの改善やフェーズ定義の見直し(「何をしたら」の営業活動の改善) |
具体イメージ | ・案件化の手前までの実際の活動データと案件化を重回帰分析にかけ、クリティカルな活動を特定し、プロセスとして徹底する。(案件化している商談は、アポの時点で◯◯を聞いていることが74%で、逆に聞いていないと82%が案件化していない、なので◯◯を聞くことを徹底するなど) ・案件化になっているものとそうでないもので落ちている理由(失注理由)を洗い出し、事前に防げるモノを事前のフェーズで弾く(定義を変える)。 |
備考 | そもそものフェーズの定義が人によってバラツキがあったり、「見積もり提出」などにしていると、商談がちゃんと進捗しているかがわからなくなる=データとして使えなくなるので注意が必要です。例えば「とりあえず見積もりを」と言われるのと「稟議を出すので見積もりを」と言われるのでは、商談の進み具合が圧倒的に違うことは容易に想像が付くと思います。「顧客視点」でフェーズ設計をするとうまくいきやすいのでぜひお試しください。 |
■人材育成:成功パターンの共有と教育への活用
改善したい状況 | 遷移率や達成率が人によってバラツキがあり、事業計画と乖離している。 |
打ち手の候補 | 期待行動の標準化と、その行動を取る為の知識やスキルの習得を促す。(「誰が」の改善) |
具体イメージ | 人によって予算達成率に差がある場合、各フェーズの遷移率、期待行動が取れているか、それに紐づく知識やスキルレベルはどうかまでドリルダウンし、足りていない知識やスキルを補強する。 |
備考 | 知識やスキルレベルのアセスメントはテストの実施や商談の中身を生成AIに分析させることが可能。期待行動が取れているかは、活動の前後はマネージャーレビューで、活動の中身は商談・架電データを生成AIで分析。ただし、どちらも戦略からの分解をした「定義」と「評価基準」を作っておくことが大切。 参考:商談・架電の中で期待行動が取れているかを確認できるAI Sales Coach |
■サービスの改善:顧客ニーズに基づく製品・サービスの改善
改善したい状況 | ・売上が事業計画と乖離していて、ターゲット改善もプロセス改善も活動数向上もスキル向上も、これ以上の伸びしろはそこまで期待できない。 ・新たなターゲットを作る為に必要な機能を追加したい。 |
打ち手の候補 | 顧客の声に基づいたサービス改善(「何をしたら」の提供価値の改善) |
具体イメージ | 顧客のソフト情報をサマライズする。商談・架電データから、顧客が直近で「何に向かっているのか」「現状取っている行動は何か」「行動の中で困っていること」をデータとして抜き出し、自社にできて他社に勝てる要素を発見し、サービス開発につなげていく。 |
備考 | 顧客との会話は、営業やCSは一人当たり1日3〜5件、インサイドセールスは10件以上の顧客と話していたりするが、その中身は会社の資産であるにも関わらず、個々人の中に眠ってしまうケースがほとんど。しかし、2024年からは生成AIの登場によりきちんと資産=データとして残すことができるようになった。 参考:商談・架電の中の情報を抽出できるAI Sales Coach |
■事業計画(リソース配分)の最適化:効果的な営業活動への人員・時間の重点配分
改善したい状況 | 一人あたりの生産性が低く、事業計画と乖離している。 |
打ち手の候補 | 組織体制や人数・時間などのリソース配分の見直し |
具体イメージ | フェーズの遷移率から逆算し、必要な行動量を割り出し、その行動を実行するのに必要な人員を配置する。 |
備考 | 現行プロセスの遷移率からの逆算では無理な数字になってしまう場合は、まずは改善できそうな遷移率に焦点を充て、プロセス改善や人材育成、ターゲットの見直しを実施する。それでもダメな場合は、フェーズの定義とそれに応じたチームの役割を見直し、その役割実行に必要なスキル・知識を持っている人員を配置するか、もしくはリスキリングしていく。 |
■事業計画(市場)の最適化:顧客の声に基づいた計画立案と調整
改善したい状況 | 連続した期で事業計画との乖離があり、未達成が横行している。現場はデータに基づき改善を回していて、これ以上の伸びしろはそこまで期待できない。 |
打ち手の候補 | 顧客の声に基づいた市場のピボット |
具体イメージ | ①ピボットをする前に現場の改善施策の再確認:「誰に」「誰が」「何をしたら」が改善できているかを再確認。 ②ターゲットにしたい顧客のニーズを、現在のサービスに関連する以外の部分までヒアリングしデータ化。 ③顧客ニーズを満たせるサービスを開発 |
備考 | マーケットインの考え方になるので、プロダクトアウトの場合は前項まで。「現在のサービスに関連する以外の部分」はなかなか聞きづらいが、顧客の経営計画からドリルダウンして、どこが一番ネックになっているかを聞き出し、そこに提案していくソリューション営業の場合は既に溜まっている場合がある。 |
<陥っていた状況>
アポは一人当たり日に3〜5件取っているが、社長しか成約できないという課題を抱えている企業がありました。最初の3ヶ月は「商談数が足りないからもっと増やそう」という司令が下りました。なんでもいいから無駄なアポなんてないからアポ数を増やそう!一日8時間、30分商談にしたら16件までいける!という方針でしたが、結局アポ数は少し増えたものの、一向に受注が生まれませんでした。
<データ分析と示唆>
そこで、データ分析を実施したところ、社長の商談は「役職者が相手の紹介案件」という温度感の高い商談がほとんどなのに対し、社員のアポの67%は「情報収集や一般職」ということが判明。また、遷移率から計画達成までの道のりを逆算すると、1人が5人分の業務時間を使わないといけないことになり、現リソースでは達成が見えないという状態ということを経営層を含めた認識となりました。
<打ち手>
67%の「情報収集や一般職へのアポ」を捨てることに。
アポの取得と商談準備、商談、事後フォローなどにも時間がかかっているので、ここを捨てることで、理論上達成が見える計算になりました。(アポ数は1日1人1件取得ペースに落として計算)
それに応じてインサイドセールスのプロセスも変更し、そのプロセスが実行できるように勉強会も実施しました。
<結果>
3ヶ月で4人の営業担当者が新規案件を成約し、採算の合う事業体系になりました。
営業データの活用は、現代の営業活動において不可欠な要素となっています。Xpotentialでは、データ活用プロジェクトの包括的な支援を提供しています。データ収集の設計から具体的な改善施策の立案まで、経験豊富なコンサルタントが伴走支援いたします。まずは無償での課題整理からご相談ください。
適切なデータ活用により、営業活動の効率化と成果の最大化を実現しましょう。
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