営業活動において失注は避けられないものですが、それは貴重な学びの機会でもあります。しかし、多くの企業では「価格が合わなかった」「競合に負けた」といった表面的な理由で片付けてしまい、その後の改善に活かせていないのが現状です。本記事では、失注を「失注原因」と「失注理由」という2つの視点から分析し、それぞれの本質的な意味と活用方法を解説します。さらに、失注理由を3つのカテゴリーに分類し、個人とチーム両方のレベルで具体的な改善策を提示。失注情報を組織の財産として活用する方法まで、実践的なアプローチをお伝えします。
「また失注してしまった…」
多くの営業パーソンやマネージャーが、この言葉に心当たりがあるのではないでしょうか。商談を重ねても成約に至らない。または、受注できた案件より失注する案件の方が多い。そんな状況に頭を悩ませている方も少なくありません。
実は、多くの企業で失注分析は形骸化しています。その典型的な例が以下のようなものです:
このような状態では、同じような失注パターンを繰り返してしまい、個人もチームも成長が止まってしまいます。
営業における失注は、実はとても価値のある情報の宝庫です。
失注案件には市場の生の声が含まれています。「なぜ購入を見送ったのか」という顧客の本音は、自社の製品やサービス、そして営業プロセスに対する率直なフィードバックとなります。例えば、「予算的には問題なかったが、運用面での不安が払拭できなかった」という声は、製品説明の改善点や提案時に強化すべきポイントを示しています。
また、失注を深く分析することで、改善の機会が明確になります。「決裁者への提案機会を逃した」「導入後のサポート体制の説明が不十分だった」など、個人の営業スキルや組織としての課題が具体的に見える場合もあります。これらは次回の商談で具体的に改善できるポイントとなります。
さらに、一見ネガティブに思える失注の中には、次の成功につながるヒントが隠されています。失注は「今回は購入しない理由」と同時に「どうすれば購入したかったか」という情報も含んでいます。例えば、「今期の予算では難しい」という失注理由は、「来期の予算確定前にアプローチする」という次の戦略のヒントにもなります。このように、失注は単なる「失敗」ではなく、次の成功につながる貴重な情報なのです。
効果的な失注分析を行うために、「失注原因」と「失注理由」を明確に区別して考えることをオススメします。必ずしもこの定義や分け方でなくても良いのですが、視点の違う要因が2つあるのでこの記事では以下のように定義していきます。
「もしこうしていれば受注できたかもしれない」という営業側の行動に関する要因を、この記事では「失注原因」と呼ぶことにします。
個人の行動レベルでは、例えば以下のような要因が考えられます:
一方、チームとしての組織的要因としては:
これに対して、顧客が示す「なぜ購入を見送ったのか」という判断の根拠を失注理由と定義していきます。
表面的な理由としてよく聞かれるのは: 「予算がない」「他社に決めた」「今は時期ではない」
しかし、その背後には本質的な理由が隠されていることが多いのです
失注原因と失注理由を区別して考えることは、なぜ重要なのでしょうか。
それは、この区別により具体的なアクションプランが見えてくるからです。例えば、お客様から「予算がない」という失注理由を受け取ったとします。
この時、失注原因の視点で考えると:
というように、次回の商談に向けた具体的な改善ポイントが見えてきます。
さらに、この区別により:
が可能になります。
失注を深く理解し、次の成功につなげるためには、「なぜ失注したのか(失注理由)」と「何が足りなかったのか(失注原因)」の両方の視点で分析することが重要なのです。
以下では、失注理由を3つの本質的なカテゴリーに分類し、それぞれの効果的な対応方針を解説します。
「検討しておきます」と言われた後、なかなか決まらない。「上司と相談してみます」と言われたきり、音信不通になる。こうした失注には、意思決定の熟度が十分でないという背景があります。
「今期の予算がない」「他のプロジェクトが優先」など、タイミングが合わないことによる失注です。
機能や価格が顧客のニーズや予算と合わないケースです。
これら3つの分類は、失注の原因を分析し、次のアクションを考える際の重要な視点となります。単に「なぜ失注したか」を考えるのではなく、「どのカテゴリーの失注か」を判断することで、より具体的な改善策を見出すことができます。
失注情報は、適切に活用することで大きな学びの機会となります。しかし、多くの企業では「失注した案件の情報は残すものの、それを次の営業活動に活かしきれていない」という課題を抱えています。
ここでは失注情報を実践的な営業力の強化につなげる方法を、個人とチーム、それぞれのレベルで見ていきましょう。
失注から学んだ教訓を、次の商談で実践することが重要です。まず、失注した案件の商談プロセスを振り返り、各フェーズでの対応を見直します。例えば、ヒアリングが不十分だった場合、次回は「なぜそのサービスが必要なのか」「導入により何を実現したいのか」といった本質的な質問を心がけます。また、提案内容についても、顧客の反応が薄かったポイントは説明方法を変えてみる、投資対効果をより具体的な数値で示すなど、改善を重ねていきます。このように、失注を単なる失敗として終わらせるのではなく、次の商談における具体的な行動改善につなげることで、個人の営業力を着実に向上させることができます。
失注情報を組織の財産として活用するには、まず情報共有の仕組みづくりが重要です。例えば、週次の営業ミーティングで失注事例を共有し、そこから得られた学びや改善案についてチームで議論します。また、失注事例をデータベース化し、「業種別の失注傾向」「競合との比較で弱みとなっているポイント」などを分析することで、組織として取り組むべき課題が見えてきます。こうした情報を基に、提案テンプレートの改善や商品開発へのフィードバック、新人教育プログラムの見直しなど、具体的な改善活動につなげていくことで、チーム全体の営業力強化を実現できます。
冒頭でもお伝えしましたが、表面的な失注理由で終わってしまうケースは多く、そうなると次に活かすことはできません。正確に把握することが大切です。ここでは、失注理由を効果的に引き出し、活用するための具体的な方法を解説します。
失注理由のヒアリングでは、タイミングと聞き方が成否を分けます。タイミングは「失注が確定した直後」が最適です。この時期であれば、顧客も判断の経緯を明確に覚えており、また「今回は採用に至らず申し訳ありません」という謝罪の気持ちから、より詳しい情報を共有してくれる可能性が高くなります。
質問は段階的に行うことが重要です:
失注情報を組織の財産とするには、標準化された共有の仕組みが必要です。まず、失注報告の標準フォーマットを作成します。このフォーマットには以下の項目を含めます:
これらの情報は週次のミーティングで共有し、チームでディスカッションを行います。特に重要なのは、単なる報告で終わらせないことです。似たようなパターンはないか、どうすれば防げたのか、他の案件にも当てはまる課題はないかなど、具体的な改善策を議論する場として活用します。
失注情報を実際の改善に結びつけるには、以下のようなPDCAサイクルを回すことが効果的です:
このサイクルを継続的に回すことで、組織全体の営業力向上につながります。
営業活動において失注は避けられない出来事ですが、それを単なる「失敗」で終わらせるか、次の成功につなげる「機会」とするかは、私たち次第です。
本記事で見てきたように、失注には「失注原因」と「失注理由」という2つの視点があります。また、失注理由は「意思決定の熟度不足」「タイミングの問題」「提案内容の不適合」という3つのカテゴリーに分類できます。これらを正しく理解し、個人とチーム両方のレベルで適切な対応を取ることが、営業力強化への近道となります。
特に重要なのは、失注情報を組織の財産として活用する仕組みづくりです。失注理由を効果的にヒアリングし、その情報を組織で共有・分析することで、より本質的な改善につなげることができます。
失注は誰にでも起こりうることです。重要なのは、その経験から何を学び、どのように活かすかです。本記事で紹介した方法を実践することで、失注を次の成功につなげる足がかりとしていただければ幸いです。
関連記事がありません
国内外のEnablementの最新動向や事例、
特別イベントのご案内等、お役立ち情報を定期的にお届けします
機能やサービス内容などが
3分でわかる
ご相談・ご不明な点は
お気軽にお知らせください
Enablement Appの実際の
画面を体感できます
導入事例や、Sales Enablementが解決する課題などをまとめた資料一覧もぜひご覧ください。