営業における転換率(移行率、遷移率)とは?転換率を高める具体策を徹底解説

Xpotential Sales Enablement Consultant

営業プロセスにおける『転換率(CVR)』とは、各フェーズの移行率と呼ばれたり、遷移率と呼ばれたりすることもある、商談化率(アポ率)、案件化率、受注率などのことを指します。このそれぞれの数値を分けて考え、改善していくことでリードからの受注率の向上を図ります。本記事では、営業プロセスにおける転換率の定義と役割を解説するとともに、転換率を向上させる具体的な方法をご紹介します。

営業における転換率とは?

営業における「転換率(CVR)」は、営業プロセスの各フェーズにおいて、次のステップへ進む割合を指します。この指標は、移行率や遷移率とも呼ばれることがあり、企業が営業活動の効率性を測定するために広く活用しています。活用している多くの企業では、商談化率(アポ率)、案件化率、受注率の3つを重要視しています。

営業プロセスにおける転換率の重要性

各フェーズの転換率を明確に把握することで、営業活動のボトルネックを特定し、改善活動がしやすくなります。例えば、商談化率が低い場合は、ターゲットリードの質やアプローチ手法を見直したり、案件化率が低ければ、初回商談時の営業の言動を見直したりすることで、全体の成果を改善します。

営業プロセスにおける転換率の種類

以下に、主な転換率の種類を解説します。

1. リード獲得率

ウェブサイトや広告、イベントなどを通じて自社サイトを見たユニークユーザーの中で、実際に資料請求やイベント申込などをしたリード(見込み顧客)の割合です。

計算式:リード獲得率 = (CV数 ÷ ユニークユーザー数)×100

2. 有効リード含有率

獲得したリードの中で、自社のターゲットと一致する有効なリードが占める割合です。

計算式:有効リード含有率 = (有効リード数 ÷ 獲得リード総数)×100

3. アポ率

獲得したリードの中からアポイントメントを取得できた割合。場合によっては、有効リードを母数とすることもあります。

計算式:アポ率 = (アポ数 ÷ リード数)×100

4. 商談化率

アポの中で実際に商談した割合です。

計算式:商談化率 = (商談数 ÷ アポ数)×100

5. 案件化率

商談の中から具体的な案件として定義される割合。案件化の基準は企業によって異なりますが、「今回解決する課題と解決方針の合意」と「次回の商談日設定」を設定するのがオススメです。

計算式:案件化率 = (案件数 ÷ 商談数)×100

6. 受注率

案件化した商談が成約に至る割合を指します。受注率はリードからの受注率、商談からの受注率など母数によって複数の指標が存在します。

計算式:

受注率 = (受注数 ÷ 案件数)×100 案件to受注率:フィールドセールスの健康状態を測る指標

または (受注数 ÷ 商談数)×100 リードto受注率:マーケティング施策の健康状態を測る指標

業界別・営業モデル別の平均転換率

営業プロセスにおける転換率は、業界や営業モデルによって大きく異なります。それぞれの特性を理解し、自社の営業活動を適切に評価するためには、平均的な転換率の目安を把握することが重要です。以下では、代表的な業界別・営業モデル別に平均転換率の目安を解説します。

1. 業界別の転換率の目安

業界によって営業プロセスや顧客の意思決定プロセスが異なるため、転換率にも大きな差があります。

SaaS業界

  • アポ率: 5%〜15%
  • 案件化率: 30%〜60%
  • 受注率: 40%〜70% ※案件to受注率
  • 特徴: リード獲得は比較的容易ですが、それ故にアポ時点での定義を厳し目に設定することが多く、アポ率は低め、案件化率は高めとなる傾向です。

製造業(B2B)

  • アポ率: 10%〜20%
  • 案件化率: 30%〜60%
  • 受注率: 20%〜40% ※案件to受注率
  • 特徴: カタログ請求やサンプル請求、問い合わせからのリード獲得率が高く、アポ率は高めです。ただし、単価が高く、意思決定に時間がかかる大型商材の場合は、受注率が低めになる傾向です。

金融業(B2C)

  • アポ率: 10%〜20%
  • 案件化率: 20%〜40%
  • 受注率: 50%〜70% ※案件to受注率
  • 特徴: 個人営業の場合は、案件化してしまえば受注に至るケースは多い傾向にあります。

2. 営業モデル別の転換率

営業モデルによっても転換率の傾向が異なります。インバウンド営業とアウトバウンド営業、またターゲット顧客の規模(SMBやエンタープライズ)で転換率が変わるため、それぞれの特徴を押さえる必要があります。

インバウンド営業

  • アポ率: 5%〜20%
  • 案件化率: 30%〜50%
  • 受注率: 50%〜70% ※案件to受注率
  • 特徴: 顧客が自発的に接触してくるため、転換率が比較的高いですが、リードの質に依存します。

アウトバウンド営業

  • アポ率: 1%〜2% ※コールtoアポ率
  • 案件化率: 10%〜20%
  • 受注率: 40%〜60% ※案件to受注率
  • 特徴: アポイント獲得が難しいため、転換率は全体的に低め。

SMB向け営業

  • アポ率: 15%〜30%
  • 案件化率: 20%〜40%
  • 受注率: 10%〜25% ※案件to受注率
  • 特徴: 小回りが効くのでアポ率は高めですが、案件化率や受注率が低い傾向にあります。

エンタープライズ向け営業

  • アポ率: 5%〜15%
  • 商談化率: 20%〜40%
  • 受注率: 20%〜40% ※案件to受注率
  • 特徴: 全体的に比較的低めですが、案件単価が高いためそこでカバーします。

自社の転換率をこれらの平均値と比較することで、営業プロセスにおける強みや改善点を明確にすることができます。ただし、業界やモデルに依存する標準値はあくまで目安であり、自社の状況に応じてカスタマイズされた目標設定を行うことが重要です。

転換率を上げるためのポイント

営業プロセスにおける転換率を向上させるには、以下の4つの取り組みが鍵となります。それぞれの取り組みについて具体的な方法を解説します。

1. 獲得したリードの質を高める

リードの質は、営業プロセス全体の成功を左右する要素です。質の低いリードを追いかけることは、時間やリソースの浪費につながり、転換率を下げる原因となります。

具体策:

  • ターゲティングの精度向上: ペルソナ設定を見直し、明確な基準を設けてリード獲得施策を実施
  • リードスコアリングの導入: リードをスコア化し、優先度の高いリードに営業リソースを集中
  • マーケティングの質向上: 広告、コンテンツ、イベントなど、リード獲得チャネルの効果を定期的に分析し、質の高いリードを増やす施策を展開

2. プロセスを改善する

一貫した営業プロセスの上で活動していることが前提ですが、改善したい転換率のフェーズでのプロセスを見直していきます。

具体策:

  • ハイパフォーマーとミドルパフォーマーの活動、特に合意項目を比較し、合意が取れていない項目に紐づくプロセスを見直す。
  • アポ率が高く案件化率が低い場合は、アポの定義を厳し目に見直す。例:アポの段階で解決したい課題とその解決策としてサービスを検討することの合意を取る

3. スキル・ナレッジを強化する

プロセスは同じなのに成果が違う場合、営業担当者のスキルや知識不足を補います。

具体策:

  • ハイパフォーマーとミドルパフォーマーの活動、特に合意項目と営業担当者の知識・スキルを重回帰分析にかけ、どの知識・スキルを持っていると改善したい転換率を改善できるかを特定し、その知識・スキルを補うトレーニングや資料を開発する
  • 受注率と相関関係の高いスキル・知識の習得をオンボーディングに加える

4. テクノロジーを使う

期待行動が取りやすくなるように、活動をテクノロジーでサポートします。

具体策:

  • CRM/SFAツールの活用: 顧客データの管理、進捗状況の把握を効率化
  • マニュアルや事例をすぐに見れるようにSFAにプレイブックを作成しサポートする
  • 業界や課題、フェーズに応じたメールのテンプレートを用意しておく
  • 顧客ごとに向けた訴求メッセージを生成AIでサポートする

転換率を下げてしまいかねない事例

営業プロセスにおいて、以下のようなミスや不適切な対応は転換率を下げる原因となります。これらの事例を把握し、対策を講じることで、転換率の低下を未然に防ぐことができます。

1. 見込み客の選定が不適切

ターゲット外の顧客やニーズのないリードを追いかけることは、営業リソースの無駄遣いにつながります。結果として、案件化率や受注率が低下します。

事例:

  • ターゲットが曖昧で、営業が幅広くアプローチしてしまう
  • 購入意欲の低いリードに1to1の時間を費やす

影響:

  • 効率的な営業活動が行えず、売上も上がらないどころか自社も顧客も時間を無駄にしてしまい、日本の生産性を下げてしまう可能性まである

2. 営業フェーズの定義が不適切

各フェーズの基準は、「市場」と「リソース」に対して適切に保つ必要があります。

事例:

  • 何でもいいからとアポを量産する
  • アポや案件化の基準が担当者ごとに異なる

影響:

  • ターゲットも、温度感も絞っていないアポは、お互いの時間を浪費してしまいかねません。例えば、「エンプラの部長以上等を狙うなら温度感は何でも良い」や「規模/役職は問わないが、同様のサービスを何かしら検討している段階なら何でも良い」等に切り替える必要があります。この基準が曖昧だと時期やチームによって差が出てしまいます。

3. プロセスが統一されておらず属人的な営業活動

営業活動が個人任せになると、担当者ごとのパフォーマンスにばらつきが生じ、転換率が安定しません。

事例:

  • 各ターゲット属性に対するトークスクリプトや提案内容が担当者ごとに異なり、成功パターンが再現されない
  • 個人の経験や勘に頼る営業活動が多い

影響:

  • 営業成果が担当者に依存し、全体の転換率が下がるリスクがある

4. 信頼性の欠如

リードや顧客との信頼関係が構築されない場合、商談化率や受注率が低下します。

事例:

  • 強引なアポ取得や押し売り的な営業活動
  • 顧客の課題を十分に理解せず、一方的な提案を行う

影響:

  • 顧客が営業担当者に不信感を抱き、以降のフェーズへの移行が妨げられる

データ活用による転換率改善

転換率の改善には営業データが欠かせません。データに基づかないと、改善するポイントや改善策はもちろん、改善できたかどうかもすべてが肌感覚になってしまいかねません。

1. ボトルネックの特定

まずは個人ごと、期間ごと、ターゲットセグメントごとの転換率だけでも把握すると、具体的にどこを改善した方が良いかの指標になります。これにはCRMやSFAツールのダッシュボードを活用し、リアルタイムで確認できる状態を作るのがベストです。例えば「前四半期に比べてAチームの案件化率が落ちている」など、具体的に改善ポイントを絞り、前四半期と今四半期で何が違うのか、市場・人・売り方・メッセージの側面で比較し、より具体的な改善点を発見していきます。

2. 改善施策の効果測定

改善施策を打った後は必ず効果測定をしましょう。例えば、営業研修をやるにしても1で話したボトルネックの特定もしていなければ、研修後の効果測定もしていないケースがよくあります。研修はお金も時間も費やすのでデータに基づき意思決定をし、その後の成果もデータで計測していくことが重要です。

まとめ

このように、最低限「転換率」を計測することで、データに基づいた営業強化が可能になります。転換率を計測するには、フェーズの明確な定義と計測が必要です。SFAの入力も、最低限フェーズだけは入力することをオススメします。欲を言えば、各フェーズで Key となるアクション(プロセス)を定め、ある程度標準化していくと、どのプロセスが悪いかまで見えてくるようになりますし、成果も安定してきます。大規模な組織になればなるほど、各部署・メンバー・役員の合意を取りながら進めていくのは困難を極めますが、Xpotentialのでは、この辺りの「各部署の事情都合を鑑みながらも理想像に進めていくフェーズ・プロセス・データ取得方法の設計と推進」のご支援もさせていただいておりますので、まずはご相談ください。ご相談はこちらから。

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