【営業スキルとは?】営業に必要な能力を計画的に身につけられるのか

Enablement Writer 清水 麻友

営業職は企業における売上の鍵を握る重要なポジションです。日々の業務で顧客と接する機会が多い営業担当者にとって、コミュニケーション能力やヒアリング力はもちろん、ロジカルシンキングやクロージング能力など、多岐にわたるスキルが求められます。

しかし、どのスキルが最も重要で、どのように習得すればよいのでしょうか?本記事では、営業に必要なスキルの種類とその習得方法を詳しく解説し、実際に営業力を向上させるための具体的なアプローチやツールを紹介します。

営業スキルとその重要性

営業スキルとは?定義とビジネスでの意義

営業スキルとは、自社の商品やサービスを顧客に提案し、最終的に購入を促進するための能力や知識の総称です。顧客とのコミュニケーションや交渉、課題の発見と解決、そして契約を締結するためのクロージングなど、様々な要素が含まれます。

企業の売上や成長は、営業部門がどれだけ効果的に顧客を獲得し、維持できるかにかかっています。優れた営業スキルを持つ社員は、企業の収益向上に貢献する存在であり、顧客との信頼関係を築くことで長期的なビジネスパートナーシップを確立する役割も担っています。

営業スキルの必要性

営業職は、自社と顧客をつなぐ役割を担っています。営業スキルの有無は、単なる業務の効率性だけでなく、企業全体の成功に影響します。営業担当者は商品を売るだけでなく、顧客の課題を解決し、価値を提供する役割を果たします。これを実現するためには、深い顧客理解、柔軟な対応力、そして的確な提案力が求められます。

さらに、デジタルツールの活用やデータ分析、マーケティング知識の習得も重要な要素で、これらを組み合わせた高度な営業スキルが求められています。

営業職に求められるスキル

営業職には、多岐にわたるスキルが求められます。バランスよく習得し、実践することで、顧客との信頼関係を築き、成果を上げることが可能となります。

以下に、営業職に必要な主なスキルを紹介します。

コミュニケーション能力と交渉力

顧客との対話を通じてニーズを把握し、そのニーズに合った提案を行うためには、分かりやすく、適切なタイミングで情報を伝えることが不可欠です。交渉力も同様に重要であり、顧客との条件交渉を成功させ、双方にとって有益な取引を成立させるためには、説得力や柔軟性等の臨機応変な対応が求められます。

ヒアリング力と課題発見力

顧客の真のニーズや課題を把握するには、優れたヒアリング力が必要です。話を聞くのはもちろん、顧客が言葉にしていない潜在的な課題や要望を引き出す力も重要です。ヒアリングを通じて得た情報をもとに、顧客が直面している問題を特定し、それに対する適切なソリューションを提供することが、営業活動の成功につながります。

ロジカルシンキングと戦略的思考

ロジカルシンキングは、複雑な情報を整理し、因果関係を明確に理解するためのスキルです。戦略的思考は、長期的なビジネス目標を達成するために必要な計画を立案し、実行するための能力です。単発的な営業活動ではなく、持続可能な成長を目指す戦略的なアプローチが可能となります。

プレゼンテーション能力

商品やサービスの特徴や利点を分かりやすく、魅力的に伝えることができれば、顧客の関心を引き、購買意欲を高めることができます。視覚的な資料の作成や効果的な話し方だけでなく、顧客の反応を見極めながら柔軟に対応するスキルも含まれます。

タイムマネジメント能力

営業職は多くのタスクやアポイントメントを抱えているものです。限られた時間内で最大の成果を上げるためには、優先順位をつけて計画的に業務を進めることが求められます。

問題解決能力

営業活動では、様々な問題や障害に直面することがあり、その都度迅速に解決する能力が求められます。問題解決能力は、問題の本質を見極め、適切な解決策を導き出すためのスキルです。

クロージング能力

営業活動の最終段階であるクロージングは、契約を成立させるための重要なプロセスです。クロージング能力とは、顧客が購入を決断するまでの最後の一押しを行うためのスキルです。効果的なクロージングには、適切なタイミングを見極める洞察力と、顧客に安心感を与えるコミュニケーションが必要です。

顧客管理能力

営業職は、多くの顧客との関係を長期的に維持・管理する必要があります。顧客管理能力は、顧客情報を正確に把握し、適切なタイミングでフォローアップを行うためのスキルです。

デジタルリテラシー

現代の営業活動では、デジタルツールの活用が不可欠です。顧客管理システム(CRM)や営業支援ツール(SFA)の操作、オンラインコミュニケーションの活用など、デジタルリテラシーが求められます。

営業スキルを身につけるためのステップ

営業スキルを効果的に身につけるためには、体系的なアプローチが必要です。特に、組織的に意図してスキル向上を図る上では、仕組みづくりが極めて重要です。以下の4つのステップを踏むことで、目標に向かって計画的にスキルを習得・実践できます。

ステップ1: スキルの現状分析

最初のステップは、現在の自分の営業スキルを客観的に評価し、強みと改善すべき点を把握することです。営業スキルの評価は、自分自身の営業成績や顧客からのフィードバックをもとにある程度行うことができますが、これらだけでは自分自身のどこが良いのかわからないのか、いまいち掴めません。

そこで重要になるのが営業スキルマップです。

営業スキルマップとは、自社の営業戦略を理想の営業プロセスに分解し、そのプロセスを成り立たせる為に必要となる能力や知識にまで分解したものを指します。
参考:「自社に最適なスキルマップとは?成果を出す営業に必要な行動・スキル・知識を可視化

そして、その能力や知識がどれくらい身についているかをチェックする為のアセスメント(チェックシート)を用意し、それを元にマネージャーと自分とでチェックします。そうすることでようやく、具体的に何ができていて、何ができていないかを把握することが可能になります。

これらは営業企画やセールスイネーブルメントの担当がいればその方が、いなければ営業マネージャーが人事と一緒になって取り組むことをオススメします。

ステップ2: 明確な目標設定とスキル計画の策定

営業スキルの評価をもとに、具体的な目標を設定し、それに向けたスキルアップ計画を策定します。目標設定はSMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づいて行うと効果的です。

例「次の3ヶ月でクロージング率を10%向上させる」など、営業戦略を実現する為のギャップを埋める施策を実行する場合

  1. 向上させるべきスキルの特定
    まずはそれを達成するために必要なスキルをスキルマップから特定し、どの能力や知識を向上させるべきかを把握します。
  2. ROIの計算
    次に、その能力や知識を何点上げれば業績がどれだけ上がるかをスキルマップを元に計算します。
    ※これらは重回帰分析によって可能です。
  3. トレーニングプランの策定
    具体的なアクションプランを立てます。どのようなトレーニングを受けるべきか、どのようなリソースを活用するべきかも計画に含めます。

ステップ3: 実践とフィードバックの活用

トレーニングプランを実行に移す際は、実践とフィードバックが重要な役割を果たします。成果を出すトレーニングに重要なのは、単に座学だけでスキルを学ぶだけでなく、実際の営業現場でそれを試し、結果をもとに改善を繰り返すことです。

例えば、新しい提案の型を作ったのなら、その効果を顧客の反応や契約率で測定し、必要に応じて修正します。また、上司や同僚からのフィードバックを積極的にもらえるようにする体制づくりも大切です。毎商談フィードバックを受けてPDCAを回している人と、月に一度PDCAを回している人とでは、成長のスピードに圧倒的な差が出るのは容易に想像がつくと思います。会社として、その環境を作ることが重要になってきます。

ステップ4: トレーニングと継続教育

営業スキルは一度習得すれば終わりではなく、継続的に学び続けることが求められます。営業の世界は常に変化しており、新しいテクノロジーや市場のトレンドが日々変化しています。

最新の知識やスキルを取り入れるためのトレーニングやセミナーに参加する、業界のベストプラクティスを学ぶ…等の自己研鑽を続けることで、スキルセットを常にアップデートできます。

営業スキルの磨き方のヒント

日々の業務を振り返り、学習を続ける

毎日の営業活動を振り返り、自分の行動や成果を客観的に分析することは、スキル向上に欠かせません。日報をつけたり、成功・失敗の原因を整理することで、次回に活かすべきポイントが明確になります。

定期的に新しい知識を学び続けることも重要です。業界のトレンドや最新の営業手法に関する書籍やセミナー、オンラインコースなどを活用し、常に知識をアップデートしていきましょう。

他者の営業活動を見る

成功しているトップセールスの方法や習慣を観察したり、インタビューをし、整理・言語化し取り入れていくことも有効な手段です。彼らの営業スタイルやコミュニケーションの取り方、顧客へのアプローチ方法などを学び、可能な範囲で自分の営業活動に取り入れてみましょう。

その際、どこができていないのかを把握した上で、そのポイントをどう乗り越えているかを注意して見定めていくことが大切です。ただ「あの人はすごい」というだけでは、どこをどう取り入れていいかがわかりづらくなってしまいます。

顧客視点を意識する

営業活動においては、常に顧客の視点を意識することが大切です。自社の商品やサービスを提供する際に、顧客がどのような課題を抱え、どのような価値を求めているのかを理解することで、効果的な提案が可能になります。

SFA/CRMを利用して営業データを分析する

営業活動をデータに基づいて分析し、改善していくことも重要です。SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)といったツールを活用して、顧客情報や商談の進捗状況を管理し、データを元に営業活動を見直すことができます。特に、フェーズごとの失注理由や顧客の現状や課題とソリューションの組み合わせによる受注率の差、業界ごとの差、何にどれだけ時間をかけているかの分析は、より営業活動を効率的にしてくれます。

フレームワークを活用して仮説立案力を強化する

仮説を立ててそれを検証するプロセスも重要です。仮説立案力を強化するためには、フレームワークを活用することが効果的です。例えば、SWOT分析やPEST分析などを用いて市場環境や顧客のニーズを整理し、適切な仮説を立てることができます。

ロールプレイングとシミュレーションを行う

実際の営業場面を想定して、同僚や上司と共に商談の練習を行うことで、本番さながらの状況でスキルを磨くことができます。また、シミュレーションを通じて、さまざまなシナリオに対応する力、自信、柔軟性を養うことができます。

フィードバックサイクルを高速化する

継続的なフィードバックを受けることで、自分の営業スキルを客観的に見つめ直し、改善点を明確にすることができます。前述しましたが、PDCAサイクルを同じ期間で何回回せたかが鍵になります。上司や同僚からフィードバックを受け、それを元に自己改善を図るサイクルを確立しましょう。弊社Xpotentialでも、生成AIを活用して毎商談ごとにフィードバックを受けられるツールを提供していますので、ご活用ください。

クロスファンクショナルトレーニングを積む

他部門との連携や理解を深めるために、クロスファンクショナルトレーニングを積むこともおすすめです。クロスファンクショナルトレーニングとは、異なる部署と協同することで全社的な課題に取り組む方法です。部署や役職を問わず、課題解決に必要な人材が集められ、部門単位ではなく全社的な視点から問題を検討します。

例えば、マーケティングやプロダクトチームとの協力を通じて、商品やサービスに対する理解を深めたり、顧客のニーズをより的確に把握できます。

おまけ:具体的な実践アドバイス

顧客ニーズに焦点を当てる

営業活動において最も重要なのは、顧客のニーズを正確に理解し、そのニーズに合ったソリューションを提案することです。商品やサービスの特徴を強調するよりも、顧客が直面している課題や欲求に対してどのように価値を提供できるかを明確に伝えることが効果的です。

例えば、B2B向けのソフトウェアを販売する場合、顧客企業が直面している課題を具体的に聞き出します。「現在の業務プロセスにどのような課題がありますか?」と質問し、顧客が「業務の効率化を図りたいが、現行のシステムでは処理が遅くて困っている」と答えた場合、「私たちのソフトウェアは、処理速度を50%向上させ、業務の効率化に大きく貢献します」といった具体的な価値提案を行う、等です。

関係構築を優先する

短期的な売上を追うのではなく、顧客との長期的な信頼関係を構築することを目指しましょう。誠実なコミュニケーションと迅速な対応は、顧客の信頼を獲得し、リピートビジネスや紹介を生む基盤となります。

初回の商談で急いで契約を迫るのではなく、まずは顧客の事業や業界の状況について話を聞き、共通の課題や目標について共感を示します。その後、「この分野での長期的なパートナーシップを築くことで、双方にとって価値を生み出せると考えています」と伝えることで、顧客が安心感を持ち、信頼関係の構築が進む可能性が高まります。

柔軟性を持つ

予期せぬ状況や顧客の要望の変化に直面した場合は、柔軟に対応できる姿勢が重要です。予め様々なシナリオを想定し、それに応じた準備をしておくことで、どんな状況でも冷静に対処できます。

例えば、顧客が急に予算を削減せざるを得なくなった場合、価格を交渉するだけでなく、サービス内容を柔軟に調整する提案を行います。「この機能を省略することでコストを削減できますが、主要な機能はそのまま提供できます」といった具体的な対応策を提示する、等です。

明確な次のステップを設定する

商談や打ち合わせの終了時には、必ず次のステップを明確にしておきましょう。例えば、次回のミーティング日程の設定や、提出すべき資料の確認など、具体的な行動を合意しておくことで、商談がスムーズに進展します。

商談が終わる前に「来週の火曜日にデモンストレーションをご覧いただき、その後のステップについて具体的にお話ししませんか」と具体的なアクションを提案します。商談が停滞せず、次の行動にスムーズに移行できます。

データに基づいた意思決定を行う

感覚や経験だけでなく、データに基づいた分析を行い、その結果を営業活動に反映させましょう。営業ツールやCRMシステムを活用し、顧客の行動データや過去の商談履歴をもとに、より精度の高い提案を行うことができます。

例えば、過去の商談データを分析し、「この業界では、デモの後にフォローアップメールを送った場合、成約率が20%向上する」というデータが得られたとしたら、デモの後に必ずフォローアップメールを送るルールを設定し、その結果を再度分析して改善を続けることで、営業活動をより効果的に進めることができます。

まとめ

営業スキルを向上させるには、評価と目標設定、実践とフィードバック、継続的な学習が必要です。 具体的な方法としては、日々の業務の振り返り、トップセールスの研究、顧客の視点化、データ分析の活用などもあります。

また、顧客ニーズへの焦点、長期的な関係構築、柔軟な対応、明確な次のステップの設定、データに基づいた意思決定など、実践的なアドバイスも必要です。

営業スキルを磨き続けることで、単純商品やサービスの販売を超えた価値を生み出すことができます。顧客との深い信頼関係を見据え、良い関係性を構築することで、長期的な安定と、市場の変化を先読みし、新たなビジネスチャンスを生み出す力をつけることができるでしょう。

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